私に命令するなんて生意気な……と思いつつ、本来は私が預かった仕事なので言われたとおりにディスプレイの前の方を支えて歩き出す。
「一ノ瀬くんは一人で運ぼうとしてたのに〜もやしっ子!」
「ああ?大学までサッカーガチ勢のスポーツ推薦枠と一緒にすんな。俺はバリバリの文化系だ」
「ふんだ、なっさけなぁーい」
「うるさい。人には得意不得意ってもんがあんの」
一矢報いろうとヤジを飛ばすがひょいひょいと簡単に避けられる。それは、この男が自分の不得意を“恥”と捉えていないからだ。
なんでもできる男のくせに自分の不得意を素直に認めて口に出せるから、弱点を突かれたところで「それが何か?」って平気な顔をしていられる。
対して私は……どうにか取り繕おうといつも必死。結局は出来ない自分を認めるのが怖いだけなんだと思う。
だって、自分に期待してくれる人なんか自分自身しかいなかった。まだできる、もっとできるって。自分を奮い立たせていなければ、私は私の人生を生きていられなかったんだ。
「別に、苦手なことを進んでやる必要ある?」
「え?」
「俺は女のお前よりは体力ある。生物学上当たり前に。能力差とかじゃなくて、そういう風に作られてるんだから仕方ないだろ」
「……」
廊下に響くガタガタというキャスターの音。それに邪魔されつつも、彼の声はしっかり私の元まで届いてくれる。


