遅ればせラブアフェア


はぁ、と呆れたため息を漏らした土方は、手に持っていたビジネスバッグをディスプレイの台の上に置き、「手伝う」と持ち手に手をかける。


「え?いいよ、私が引き受けたんだし」

「誰から?」

「一ノ瀬くん。急ぎの仕事があって困ってたから」

「……困ってたとはいえ、女一人に運ばせるかね」


ゆっくりと歩き始める海里に再び「私が運ぶってば!」と食い下がると、「無理。女一人でする仕事じゃねー」と譲ってくれない。

倉野院長も海里も女、女って……だからなんなのよ。

私は女だけど、海里に続いて営業成績毎年2位だもん。学生時代だって海里に勝てたことはないけれど、海里以外には成績で負けたことなんてない。


「何よ、女だからってみんな馬鹿にして……」


聞かせるつもりもなくボソリと小さく呟けば、徐に立ち止まった海里がこちらを見下ろす。

自分より顔一個分上にある綺麗な顔にじっと見つめられて、ゴクリと喉を鳴らしながら「なによぉう」と身構えれば……


「馬鹿にした覚えはない。全く」

「は?」

「お前は女。ただの事実だろ」

「……」


はっきり、キッパリ。いつも通りの無表情で告げられて。一瞬呆けていると、「一々気にして自分追い込んでんのお前自身だろ」とおでこをツンと小突かれた。


「あいた!何すんのよ!」

「勝手に勘違いして無理しないでくれる?お前のことずっと見張ってはいられないんだからさ」

「はぁ?別に無理なんかしてないし」

「してるだろ。女だからって舐められたくない、社長の娘だからって気を遣われたくないーって。お前分かりやすいんだよ」

「……っ、う、うるさいよ」


言い当てられたことが気まづくて目を泳がすと、「ほら、お前も前持て。俺一人に運ばせる気かよ」と顎で指示する海里。