逸らされた視線の先にはキャスター付きの大型ディスプレイ。各課に一台ずつ配備されており、会議などで使う際にはその都度会議室に移動するのだが、これが中々に重労働なんだ。
キャスター付きだがそれでも割と重たいし、薄型のディスプレイはバランスが悪く、運ぶのにコツがいる。
廊下に置いておくには大きすぎるし、誰かが誤って倒してしまったら管財課からの嫌味は免れないだろう。
「……私が運んでおくから、メール送り直しておいで?」
「え?!いいんですか?」
「うん。執務室に戻すの?」
「いや、8ーA会議室に……あ、でも……」
私の提案にパッと明るくなった表情が一瞬にして沈んだ。その理由は考えなくたって分かる。
「もう……遠慮しなくていいってば」
「いや、だって女性には重たいし、先輩にそんな……」
「……」
私が一番嫌がるであろう理由は避けて口にしてくれる彼はとてもいい子だ。でもそうやって気を遣われてしまっていること自体が息苦しい。
「はい!じゃあ代わりにこの荷物執務室に持って帰って!」
「えっ、あの、」
「私のことは本当に気にしなくていいから、早く相手先にメール送りなおしますって伝えな?」
「は……はい!」
床に荷物を置いて指示を出せば、僅かな迷いを見せつつも一ノ瀬くんは言われたとおりスマホを耳に当てた。
(よし、じゃあ私はこのディスプレイを倒さないように……)
腕まくりをしてディスプレイ台の持ち手に手をかける。グラリと横揺れするそれに早速ヒヤリとしたがゆっくりとキャスターが回り始めた。
このフロアの端にある会議室を目指し、全体重をかけてディスプレイ台を押す私。
小休憩を繰り返しつつ、ようやく中間地点のエレベーターホールに差し掛かった頃、タイミングよく扉が開いた。
「……何してんの」
「土方!?え、帰ってくんの早くない?」
「まあ、急いだので。……で、何してんの」
「これ、持ってくの!8ーA会議室に!」
「……いつの間にかもっと重そうなもん運んでるの何なの」


