「本当にここでよろしいんですか?私がお持ちしましょうか?」
「ありがとう。でも本当に大丈夫よ?あなたが持ったら腕折れちゃうかも!」
戯けて言えば、「そんな!折れませんよ!」と可愛らしい制服の袖を捲り上げてやる気をアピールする彼女。
小柄で、細くて……小動物系の可愛い彼女を前にすれば謎の男気が発動した。
「執務室すぐそこだし!任せて!私力持ちだから!」
「本当ですか……?」
「うん!ありがとうね?受付戻って大丈夫よ」
「はい……それじゃあ」
エレベーターのドアが閉まるギリギリまで名残惜しそうにこちらを見つめる彼女に手を振って。一度床に置いた紙袋を再び手に取った。
車から降りたばかりの時は良かったが、時間が経てば経つほど持ち手部分が指にめり込みジンジンと痛くなっていく。
でもまあ、あと少しだからと自分に言い聞かせて、えっちらおっちら荷物を運んでいると、廊下の角を曲がった先から、誰かと電話をする男性の声が聞こえてきた。
「申し訳ありません!……え?今ですか?はい、えっと……」
聞き覚えのあるその声は、今年入社した一ノ瀬くんのもの。角を曲がれば、こちらに気がついた彼が社用携帯片手に困ったように眉を歪めた。
電話先に聞こえないように「どうしたの?」と尋ねれば、「少々お待ちください」と告げてから保留ボタンをタップする。
「いやぁ、取引先からの電話で。さっき見積書を送ったんですけどメールが届いてないって……」
「あー、添付ファイルつけてた?」
「はい、カタログとかも併せて……」
「容量大きかったのかもね。あちら側のフィルタリングで制御されたんだと思う」
「すぐに送って欲しいって言われてるんですけど……」
「あー……」


