遅ればせラブアフェア




「それでは、お見積りができ次第メールでお送りします。本日お渡ししたカタログの中から追加で導入したい機器などありましたらいつでもご連絡ください」

「倉野院長からお話があった通信機器については向坂に共有して見積りに含めるようにいたしますね」

「ああ、よろしく頼みます」


一通りの聞き取りと説明を終えて、初回の打ち合わせは終了の流れとなった。

机上の資料などを片付け始めると、それまで我関せずの姿勢を保っていた武さんが今更話し始める。


「向坂さんの下のお名前ってなんて読むんですか?」

「ああ、読めないですよね。“みなも”です」

「へぇ、珍しいですね」

「あはは、よく言われます」


机に置いていた名刺を手に取りながら尋ねられ、自分の中でテンプレートになっている会話を交わせば、「向坂って……」と武さんの隣に座っていた院長が反応を示した。


「向坂って、スロープアシストの社長と同じ名字じゃない?確か社長の娘さんも珍しい名前で……」

「ああー……」


気づかれてしまったか、というのが正直なところ。

ここで嘘をつくわけにもいかないので「はい、娘です」と曖昧な笑顔で答えれば、今日一度もこちらを見ることのなかった院長の瞳が大きく見開かれた。