遅ればせラブアフェア


「いやぁ、まさかこんな綺麗な人が担当してくれるなんて。ありがたいなぁ」

「え?いやぁ……あの」


別に容姿を褒められるのが嫌なわけではない。しかし、飲みの席ならまだしも、初めての打ち合わせで開口一番そういったことを言われると反応に困ってしまう。

私の容姿が仕事に関係するのだろうか。下がった目尻に邪なものを感じてしまうのは自意識過剰すぎるだろうか。

ただのコミュニケーションの一環の軽口かもしれない。でもやっぱり私が女じゃなければ初対面でこんなことを言われることはなかっただろう。


(ああ、ダメだ。……卑屈すぎる)


両親に心配させないように、周りから舐められないように……表面上は常に強くあろうとしてきた。

でも私の本質は卑屈で、陰気臭い人間なんだ。


「それでは早速ですが、開業する介護施設について開業時期や導入を希望されている機器などをお聞かせいただけますか?」


気持ちを切り替えて溌剌とした声で尋ねる。施設長は息子さんとのことだったので武さんに向かって声をかけたのだが、「開業は来年の4月を考えてます」と返ってきた回答は院長のもの。


「機器とかはよく分かんないから父さんが決めてよ」

「お前なぁ、4月からは施設長になるんだから、ちゃんと勉強してくれよ?」

「まあ、なんとかなるでしょ」

「行く行くはこの病院も継いでもらわないといけないのに……ちゃんと自覚を持て」

「えー、それは姉ちゃんに任せてよ」


なんとも他人事な彼は私のひとまわり以上上の男性とは思えない言動だ。