【生まれた時から、スタート地点が違う】
ずっとずっと……無理やり目を逸らしては、目の前に立ちはだかって私を苦しめ続けてきた現実。
男に生まれていたら……当たり前にスロープアシストの社長になれたはずなのに。
自由に夢を語れたはずなのに。誰にも舐められることなく、相手にしてもらえたはずなのに。
……——私は、生まれた時から間違えた。
必要なのは跡取りになれる“男”だったのに……。長年子宝に恵まれなかった両親のもとにようやくやってきたのは“女”の私だなんて。
もちろん面と向かって言われたことなどないけれど、きっと両親はひどくガッカリしたことだろう。
性別によるハンデを埋めるため、ひたすら努力を重ねた。両親の自慢の子どもになりたくて、スロープアシストを継いで日本の医療に貢献したくて……。
でも、ずっとずっと……“女であること”が私の人生の邪魔をしてきたんだ。
「遅れてすみませーん」
「……っ、」
ノックもなく開かれた扉から登場したのは明るめの茶髪が印象的な40代くらいの男性だ。
院長から「長男の武です」と紹介された彼はお尻のポケットから名刺を2枚取り出しこちらに差し出した。
海里、私の順に名刺を交換し、再びソファーに着席すると、院長と違ってやけにじっと私を見つめてくる。
何か聞きたいことでもあるのだろうかと目を合わせれば、二ヘラと目尻が下げられた。


