遅ればせラブアフェア


敵を倒すにはまず敵を知ること。気まずいだけの取引先訪問だと思っていたけれど、今日はこいつの手の内を探るチャンスであり、私の実力を示すまたとない機会。

ここで海里に「こいつ大したことないな」と思われでもしたら……私は悔しさで3日は寝込むだろう。


「倉野院長、今日はお電話でお話ししていたとおり介護施設の新設機器についてご案内にまいりました。こちら担当の……」

「初めまして。スロープアシスト株式会社、営業一課の向坂と申します」


海里の導入に乗っかって、すかさず名刺を差し出す。

「ああ」と私に向けられる視線。顔から始まって足の先までひと舐めされると明らかに値踏みされていることに気づいてしまう。


「担当は女性の方なんですね……」

「はい、彼女は直近で他の介護施設の立ち上げに携わってますので何かお役に立てるかと」

「へぇ、なるほど。院長の倉野です」

「よろしくお願いします」


明らかに私が担当だと知って気分が沈んだ様子だった。せっかく満ちていたやる気がほんの少し萎えてしまう。

こういう反応は少なからず経験してきた。若い女性というだけで舐められるし、性別を聞いただけで男性に変えてくれと言われたことだってある。

能力ではなく、性別で“できる”、“できない”を判断する風潮は何だろうか。

男性の比率が多い仕事、女性の比率が多い仕事、それぞれあるが、その仕事に対して責任を果たせるかどうかは性別ではなく本人のやる気と能力次第。

私はそう思うのだが……まあ、世の中いろんな考えの人がいる。他人の考えを憂いたところで時間の無駄なので、これからしっかりと信頼を得られるように頑張ろう。