遅ればせラブアフェア





「今日はお時間いただきありがとうございます」

「いやぁ、こちらこそごめんね。せっかく病院のほうがひと段落したところなのに」

「いえ、またお声がけいただいてありがたいです」


院長室に案内されると、少し強面の男性が一人がけのソファーに腰かけていた。60代後半と見受けられるその人は、医療雑誌でよくお見かけするB病院の倉野院長だ。

慣れた様子で院長と話す海里は淡々としつつも普段より随分愛想が良く、院長から慕われているのが二人の会話から伝わってくる。


「新しい機械も調子いいよ。操作方法も土方くんが講習会してくれたからバッチリだし」

「それはよかったです。引き続き定期メンテナンスに伺いますね。あ、そうだ、長谷川先生が最近エコーの調子が悪いとおっしゃっていたので一応カタログ持ってきました。よければ参考にされてください」

「ありがとう。いつも仕事が早くて助かるよ」


徹底したアフターフォロー、先回りした営業活動。その全てに嫌らしさがないのはいい意味でこいつの淡々とした性格のおかげだろう。

必要以上に媚を売るわけでもなく、蔑ろにするわけでもない。主観やエゴがなく、自分にとって有益な情報だけを与えてくれる人間というのはビジネスの場において誰よりも信頼できるものだ。

腹立たしいが、こいつの実力は認めざるを得ない。そうでなければ、この私が何年も負け越しているはずがない。