「は?なに?!……んが、」
「待って、まだ顔見せんな」
枕から抜け出して海里を見ると、目があった瞬間再び枕で顔を覆われた。
「ちょ、……死ぬ!窒息する!」
「じゃあ、その顔どうにかしろ」
「は、はぁ?!」
「服もちゃんとして」
「……」
その顔どうにか、って今自分がどんな顔をしているのかなんて当たり前に分からないし、はだけた服はお前が脱がせたんだろう?!と全力で抗議したい。
しかしながら、このまま胸を丸出しにしているわけにもいかないので、言われた通りにブラウスのボタンを止めていく。
「全部海里のせいなのに……なんで私が怒られなきゃなのよ」
唇を尖らせてブツクサ文句を言うと、はぁと小さなため息と共に「……お前が止めないからだろ」とまたもや言いがかり。
「は……はぁ?!」
「お前が止めなきゃ誰が止めんだよ」
「何言ってるの?私は最初っから嫌って……」
「本気で嫌がれよ」
「い、嫌がってたわよ!」
「嘘つき」
「はあ?!」
売り言葉に買い言葉。先ほどまでの艶っぽい雰囲気は消え失せ、いつものトムとジェリーに逆戻り。
「……チェックアウト、10時だから。風呂入るならさっさと入れよ?俺は髪を乾かしてくる」
「……」
ベッドから降りた海里はこちらを見ずに自分の身なりを整え、そんな背中を私はじとりと見つめた。
(何よ、さっきまで私のこと熱っぽい目で見てたくせに……)
あの顔、ちょっと格好良くてドキドキしたのに……なんて、私にだけ熱が残っていることに唇を尖らせる。
そのまま洗面所に向かって歩いていく海里。私も帰り支度を済ませようと体を起こした刹那、海里が体半分だけ振り返って私を見下ろした。


