飽和状態の頭を携えて、もはや拒否する姿勢を見せることすらできなかった。
彼から与えられる温もりをただ受け入れて、意識しなくても勝手に声が漏れるし体が跳ねる。
どうしよう、このまま……シてしまうのだろうか。本当は愛し合った男女しかしたらいけないことなのに。本当は結婚してからじゃなきゃダメなのに。
人より頭が固いことは自分でも分かってる。それでも私には私なりの理想があって、他人に強要することはないが、少なくとも自分だけは自分の理想の人でありたいと自分を律してきたのだけれど……。
「南萌、ちゃんと止めろよ、早く……」
「……っ、ゃ、」
「もっとちゃんと止めろ、馬鹿」
さっきまで嫌と言ってもやめてくれなかったくせに。苦しそうに「止めろ」と要求してくる海里。
しかし残念ながら、その表情は私の中の獣を煽るばかりで、彼の手や口から与え続けられる刺激に抗うことはできなかった。
もう一度「馬鹿」と呟いた海里はこれまで以上に激しく私の唇を塞ぎ、私が窒息する寸前、押し付けるだけの長いキスを最後に静かに体を離した。
「はぁっ、は、……海里?」
「……」
息を荒げながら彼を見上げれば、涙でぼやける視界の中、いつになく険しい顔の海里がいる。
デフォルトが無表情だからだろうか?海里がこうやって感情を表に出すと、何故だか私は少しだけ嬉しくなる。
「か、いり……」
「っ、」
彼に腕を伸ばしたのはほとんど無意識だった。それまであった温もりが離れていくのが寂しくて、彼の思っていたよりずっと広い胸板に抱きついてみたくなって。——しかし、
「……んぐっ、」
「ダメ。これ以上は無理。おしまい」
ボフリと顔に枕を押し付けられ、視界は黒に覆われた。


