遅ればせラブアフェア



「べ、別に!あんたに心配されるような私ではないのだよ……!」

「喋り方キモ」


吃りながら途絶え途絶えに拒絶すれば、呆れた口調で貶される。ムカつくのに、腹立たしいのに……今の私じゃ、分が悪い。


「は、早く髪の毛乾かしてきたら?」

「んー……」


遠ざけたくて言ったのに、意図に反してこちらに近づいてくる海里に参ってしまう。

気配からじーっと顔色を窺われているのが伝わって、何故だか顔が熱くなっていくから勘違いされそうで嫌だ。


「なによ、あっち行って」

「ふっ、顔赤いけど、やっぱり熱ですか?」

「……違うわよ、ふ、憤慨してるの」

「はは、なんでだよ」


おかしそうに声をあげて笑う海里。珍しい笑顔を無意識に見つめていると、口角を上げたままの彼がグッと距離を詰めてきた。


「……っ、」

「なぁ、お前……もしかしなくても意識してる?」

「なっ、は?……はぁ?!」


目を細めて意地悪に問われ、ギクリとあからさまな効果音が頭上に浮かぶ。我ながらわかりやすい反応に、海里の顔はさらに悪どく変化した。


「へぇー。ああ、そう?」

「な、なによぅ……」


見透かすような表情に落ち着かない。逃げ出したい。でも負けたくなくて、私はまた喚く。こいつの思うようにはなりたくないって、情けないけどもがくことしか出来ないんだ。


「あっち行ってよ!変態!」

「やだって言ったら?」

「なっ、殴る!」

「殴れるもんならどうぞ?」

「っ、」