カモフラなのに溺愛されても困ります！

藤崎さんは昔からおじいちゃんの運転手を務めている。

おじいちゃんちに行く時は迎えに来てくれる。

小さい頃は大喜びで車に乗ってたけど、今じゃ申し訳ないと思う。

電車で行けるのにっていつも言ってるんだけどね。

何を言っても通用しないから、黙って従うしかない。


「いつもありがとうございます」


車に乗り込むとドアが閉められた。

藤崎さんは運転席に戻ってきて、微笑む。


「こちらこそ、いつもご丁寧にありがとうございます。それでは、出発いたしますね」


そう言って、車は静かにおじいちゃんの家へと向かって走り出した。


おじいちゃんの家はいつ来ても、綺麗な日本庭園で、心が落ち着く。

玄関前で車が止まると、家の中からおじいちゃんに仕えている馴染みの顔の使用人の方々が出てきた。


「楓お嬢様、いらっしゃいませ」

「ちょ、いつも言うけどやめてよ。ただ私は孫なだけであって、お嬢様じゃないんだから」

「あらあら。私たちは幼少の頃から楓お嬢様を見ているのですよ。今更、やめてとおっしゃられても」


ホホㇹと上品に微笑む家政婦の柴田さん。