カモフラなのに溺愛されても困ります!

ちょ、ちょっと待って……?!

今、どういう状況?!

ええっと……昨日、私、お見合い途中で黙って逃亡したよね?

そんな事したら、理由はどうあれ、無礼だと怒って破談になるはずなんだけど……?

いや、むしろそれを狙ったわけだし。

なのに……なのに、何で、体調不良と聞いて、お見舞いに来ましたとか言って現れんの?!

私は着ていたルームウェアを脱ぎ捨てる。

淡いピンクのふわっとした感じのゆるいトップスとロングパンツのセットアップで、人前でも別に恥ずかしい物ではないんだけど……西園寺の坊ちゃんの前でやっていい格好ではない。

体調不良なんて嘘なんだし、別にお見舞いになんかこなくてもいいのに。

私はクローゼットからフード付きのトレーナーにジーパンという、かなりラフな格好に着替え、軽いメイクをした。

もう見られたけど、流石にすっぴんだけは嫌だ。

しかし……どうしてもまた、顔を合わせなきゃいけないのか。

気が重いなとため息をついて、部屋を出て階段をおりた。