カモフラなのに溺愛されても困ります!

「慣れない事をして、体調が悪くなったのかもしれないわね。先方には説明しておくから、今はゆっくり休みなさい」

「……はい」


お母さんが私の額をなでると、たたんだ着物を持って部屋を出て行った。


「父さんも自分の事ばかりで、楓の体調に気が付かなくてごめんな。何も考えなくていいから、ゆっくり休んで元気になって」

「ありがと……」


お父さんは優しく微笑んで、部屋を出て行く。

何も考えなくていい……。

これはつまり、私のお見合いぶち壊し作戦が成功したととらえていいのかな?

カモフラージュに失敗した彼は、また次の相手を探すのだろう。

……これで、人生初のお見合いはおしまい。

もう二度とお見合いなんかするもんか。

やっぱり私にはキラト君がいればいい。

アイドルは私を裏切らないもの。

……ますます、恋愛なんかできなくなちゃったな。



次の日も昨日と同じように穏やかな気候だった。

しばらく晴れ空なんか見たくない。

洗顔を済ませて、リビングに行くとお母さんが私に気付いた。


「おはよう。あら、昨日よりは顔色良くなってるわね。気分はどう?」

「……まあまあ」


気分はまだ最悪だけど、仕方がない。