カモフラなのに溺愛されても困ります!

頭ではわかっていたつもりなのに、私はすっかり朔夜さんのペースに飲まれていて、ドキドキがずっと止まらなかった。

そんな中、不意に朔夜さんが立ち上がる。


「申し訳ありません。仕事の電話がきたので、席を外します」

「あ、はい」


スマホを持って立ち上がり、頭を下げると部屋を出て行った。

その姿に私の両親も感心したようなため息が出ていた。


「できる男って違いますわね」

「それでも色々と大変だったんですよ。幼少期は海外を転々としていたので……」


お母さんのつぶやきに、夫人が答えた。

海外を転々……。

やっぱり私とは世界が違いすぎるんだけども。


「……すみません、ちょっとお手洗いに……」


メイクを直しに行こうかと思い、バッグを持って立ち上がる。

仲居さんにトイレの前まで案内された。

自分で戻れる事を伝えて、私はトイレに入るなり、スマホを取り出した。


『戦意喪失』


ただ、そのひとことを送って、スマホをしまってメイクを直す。