カモフラなのに溺愛されても困ります!

普通に品定めされるかと思っていたけれど、夫人は優しく微笑みかけるだけ。

しかも、このような機会を設けていただき……だなんて、どういう事?

いやいや、こんなの社交辞令に決まってる。

どうせ、坊ちゃんが止めを刺すのだから、油断なんかしちゃいけない。

夫妻の後ろから、一人の男性が部屋に入ってくる。

彼を見た瞬間、私は息を飲んだ。

高い身長にすらりとした体型。

黒髪が柔らかく額にかかっていて、整った顔立ちが際立っている。

切れ長の目が、こちらを見て柔らかく細められた。

微笑んだその表情は、優しげで穏やかで……正直、ドキッとした。

大企業の御曹司……、想像以上だった。

清潔感があって、上品で、絵に描いたような王子様みたい。

こんな人、リアルにいるのかと凝視してしまったほど。


「初めまして。西園寺朔夜です」


落ち着いた声。

23歳って言ってたよね……?

私と5つしか違わないって、信じられないくらい大人っぽい。