カモフラなのに溺愛されても困ります!

お母さんに睨まれたけど、お父さんは落ち着かないようで何回も深呼吸を繰り返している。

ししおどしの、『カポーン』の音にビクッと肩を震わせるから、可笑しくて仕方ない。

正直、緊張しすぎて、限界を超えていた私はもうすべてが笑いに繋がっている。


『楓の威圧に耐え切れず、敵前逃亡?!』


愛莉から送られてきたメッセージに顔をほころばせた時だった。


「失礼いたします」


仲居さんの声の後にふすまが開いて、私は慌ててバッグにスマホをしまう。

最初に入ってきたのは西園寺グループの社長夫妻。

姿を見せた瞬間、合図もなしに私たち親子がバッと立ち上がる。

あの西園寺の事だから、もっとプレッシャーがあるかと思ったけれど、想像とは全然違って、かなり優しそうな夫婦だった。

それでも、黙っているだけでも品のあるオーラに私たちは圧倒されるだけ。


「遅くなり申し訳ございません。西園寺でございます。この度はこのような機会を設けていただき、ありがとうございます」

「い、いえ!そんな……とんでもございません」


西園寺夫人の丁寧な挨拶にお母さんが頭を下げて答えた。