カモフラなのに溺愛されても困ります!

この日がこなきゃいいのにって思ってたけれど、戦いの日がやってきてしまった。

私の心とは裏腹の青い空がどこまでも広がる、まさにお見合い日和。

おじいちゃんの家に両親と共に向かい、着付けを開始する。

今日のお見合いためにおじいちゃんが準備してくれたのは、淡いクリーム色の訪問着だった。

柔らかな生地に、繊細な金糸で桜と流水の文様が描かれている。

裾から肩にかけて、まるで春の小川に花びらが流れていくような柄で、見ているだけで優雅な気持ちになる。

帯は落ち着いた薄紫色で、控えめな金の刺繍が入っている。


「派手すぎず、でも清楚な感じでって旦那様がおっしゃったのですが、本当にその通りですね。しかも楓お嬢様にピッタリです」


柴田さんのの言葉通り、初々しさと上品さのバランスを考えた装いだと思う。

褒めてくれたけれど、正直なところ、こんなちゃんとした着物を着るのは初めてで緊張する。

帯が少しきつくて、深呼吸するのもひと苦労だ。

髪は美容師さんにやってもらった。

少し高めの位置でまとめて、小ぶりな髪飾りを挿してくれる。

鏡を見ると、いつもの自分とは違う、少し大人びた女性が映っていて、なんだか不思議な気分になった。