「ここ、車多くて危ないから…手ぇ繋いであげる」
ちょっと。
私は待ったをかけたい気持ちでいっぱいだった。
“車が多くて危ないから”?
そんなの私と登校してる時は一度も心配してなかったでしょうが。
納得いかないという目つきで弟を見る。
「へぇ~…琴李とは自分から手を繋ぐんだ。いつもは嫌がるくせに」
私のチクチクとした言葉に怯む様子もなく、由太が言った。
「だって琴李ちゃんは一人だと危なっかしいから。…オレが守ってあげなきゃ」
その発言に私は琴李を見る。
確かに…大人しい子だし、放っておけないのは分かるけど。
琴李は由太が差し出した手をじっと見つめて、困ったように私へと視線を向けた。
小さく息を吐いて琴李に耳打ちする。
「ごめん、手を繋いであげてくれる?私もここら辺を由太一人で歩かせるの心配だから…」
琴李が頷く。
「…えっと…じゃあお願いしようかな?」
そう言って琴李が由太の手を握る。
由太の顔が一瞬、嬉しそうにほころんだのを私は見逃さなかった。
そのまま照れた様子で歩きだす弟と、てくてくと小さな背中を追いかける琴李を後方から眺める。
こうして見ると由太は、実はちゃんとしている子だったのかもしれない。
今までは私が先立って何でもかんでも世話を焼いていたから、それに甘えていたってだけで。
本当は自分一人で考えて行動できる、しっかりした子だったのかも。
琴李というお姫様の手を握りしっかり車道側を歩いてあげる由太の後ろ姿は、物語に出てくる騎士のようで…。
何だか少し、誇らしかった。



