『どうした、仕事中に…なにかあったか?』
「あ…えっと…お父さんは“ひなた”を知ってる?」
私が聞くと、お父さんから意外な答えが返ってきた。
『あぁ、エリスさんのところのお嬢さんだろう?来るのは今日だったか…よし、帰りになにかごちそうを買って帰るよ』
パチパチとまばたきを繰り返す。
まるでひなたのことを、前から知っているみたいな口ぶりだ。
「お、お父さん…“ひなた”ってどういう事情でウチに来ることになったんだっけ…?」
『え?それは…エリスさんと母さんが親友同士の縁で、今回エリスさんが仕事で長いこと留守にするからウチで預かることになったんだろう?』
___変なことを聞くなぁ。
お父さんが不思議そうにして言った。
『お前とひなたちゃんもずっと仲良しだったから心配ないとは思うが、ケンカしないようにな…それじゃあ、お父さんは仕事に戻るから』
「あ…うん、頑張ってね」
ツーツーと音を鳴らしながら、電話が切れる。
隣を見ると、ひなたが「ね、言ったでしょ?」と言って微笑んだ。
「エリス様は、奏ちゃんのお母様と仲良しの間柄。そのご縁で私を預かってもらってる…そういう設定なんだ」
「…そうなんだぁ…」
私はようやく安心したように息を吐く。
じゃあ、何も心配することはなさそう?
足から力が抜けていくのを感じて、その場にぺたんと座ってしまう。
ひなたがそれを見て、再び笑みを浮かべた。



