ローズ・ローザ・ローゼス





僕はローズの家に、しばらく居候させてもらうことになった。


ローズの家は、一人暮らしにしては割と大きく、戸建ての賃貸だった。


「2階はほとんど使っていないから、好きにするといいわ」


と僕は2階を貸してもらうことになった。2階には6畳半と8畳の2室があって、僕は8畳の方を使わせてもらった。2階にはトイレもあった。風呂場や洗面所はさすがに1階にしかなかったけど、それでもやはり一人暮らしにしては立派だったし、その辺りも自由に使わせてくれた。


ただ、1室。ローズは「入ったらダメ」と言った部屋があった。ローズが留守にしている時にちらっとだけ中を覗いたのだが、そこはローズの執筆部屋らしかった。


机と椅子が、窓の前に置かれ、それを囲うように本がぎっしり詰まった本棚があった。


僕はローズに内緒で、その本棚から1冊ずつ、拝借しては、本を読み漁った。僕はここに来るまで、本をまともに読んでいなかったから、名前くらいは聞いたことがある作品ばかり読んでいたのだが、そのどれもがやはり名作にふさわしく、面白いと思った。


ローズがカフカを勧めてくれたのも、僕がいつものように本を物色しているところを、ローズに見つかった時だった。


「入っちゃダメって言葉の意味、わかってて入ったのよね?」


ローズは普段怒ることは滅多になかったのだが、その時だけはかなり怒っているように思えた。