ローズのところに、マスターがコーヒーを持ってきた。
ローズはコーヒーを一口飲むと、ふっとため息をつき、それからまたタイピングに戻った。
「それにしてもよく浮かぶよな。そんなに書いてどうするんだ?」
「別にどうもしないわよ」とローズがまたコーヒーを一口飲んだ。
「ただ、私はこの、溢れてくる吐き気をどうにかしたいだけ」
「そう。で、僕がここに座っていると邪魔かな?」
「そうね、少し邪魔かしら。でも、居たいなら居てくれてもいい」
ローズはいつも「居てほしい」という言葉を使わなかった。
「じゃあ、居たいから居るようにする」
ローズはそれには何の反応もせず、ただ、目の前の画面を見ながら、タイピングを続けていた。



