バイト先、開店前のカフェに着くと、マスターはカウンターテーブルに座り、スクラッチくじを10円玉でこすっていた。


「何枚買ったんですか?」


「10枚。今のところ200円かな」


「で、それが最後の1枚ですか?」


「そうなんだよ。ねえ、キミは運はいい方かい?」


「いや、さっきちょうど美味しいって評判のメロンパンが、僕の目の前の友人が買ったのを最後に売り切れたんです」


「だったら、さっさと着替えてこい。キミがここにいると運気が逃げていく」


「そうさせてもらいます」


と僕はバックヤードに入り、自分のロッカーを開け、制服に着替えた。


店内の方からは、マスターの「クソ、やっぱりあいつのせいだ」という声が聞こえた。どうやら、最後の1枚を外したらしかった。