吹く。そして揺れる。奏でる音楽。惜しみのない拍手のように。
俺はそれに向かって投げる。投げたボールは不規則に。右へ左へと転がって。それを拾ってまた投げる。その度に風の流れに逆らった木々が揺れる。木の葉が落ちる。雨が降る前のツバメのように、低く、鋭く、滑空する。
それで一度、尻尾を切ったことがあった。
鋭い葉を持つこの木が何という名前の木なのかは知らない。舐めて治そうにも、舌が届かなくて、結局どうしたんだっけ。放っておいたんだっけ。
近頃物忘れが多くていけない。
物忘れは順応を意味する。俺は順応してはいけない。理性だけは保っていなければ、何のためにリスになったのか、わからない。



