ローズ・ローザ・ローゼス





こんな日は洗濯日和だけど、あの男の着たものも一緒に洗って干すと思うと、さっきまでの晴れやかな気持ちが一転。やっぱりどこか表情は曇って、せっかくの一日の始まりがたちまち台無しになる。


だから、もう洗濯はやめて、それならばと、部屋の掃除でもしようとコードレス掃除機を充電器から外していると、いつ脱いだのかわからない、丸まって異臭を放つ靴下が片一方。右か左かもわからないそれが転がっていて、やっぱりあの男のものだと気づくと、深いため息が出る。


結局、掃除をする気もすっかり失せて、リビングに戻ると、男が放った新聞や、食い散らかした後の食器がまだテーブルに残っていて、今からこれも片付けないといけないのかと思うと、やっぱりここでもため息。


ならば、せめてトイレ掃除でもと、トイレに行くと、便座は上がりっぱなし。ますますストレスは増していく。


一人のはずなのに、一人になれる場所はこの家にはどこにもない。自分の部屋でもあればいいのだけど、それもない。


私には自由になれる空間が、どこにもない。


どこもかしこも、あの男のテリトリーで、このままのスピードで夫婦生活が続くのかと思うと、このままここで死んでいくのだと思うと、もう死んでしまいたいような、いたもうすでに死んでいるような感じで、生きた心地がしない。


でもまだ、そういう風に考えられるだけ、マシなのかもしれない。


そのことに気づかずに死んでいく「妻」という肩書きを持った女性は、ごまんといる。


そんなごまんに私はなりたくなかった。