ローズはお目当てのメロンパンを買えて嬉しそうだった。


「なあ、僕にも一口、くれないか?」


「あら、だってあなた」


「そうだよ。僕はさっきも言ったように甘いものが嫌いだ。戦争より嫌いだ。でも、こうして目の前でメロンパンの最大の魅力、みたいなものを見せられたら、黙っていられない」


「そう。でも、残念ね。このメロンパンは私のなの。あなたにはあげない」


「意地悪だな、相変わらず」


「自覚はしてるわ。あ、それよりバイト、いいのかしら?」


僕はスマホで時刻を確認した。


「まだ大丈夫。それに少々遅れたって、どうせお客さんは少ないし、怒られることもないよ」


「そう。それならいいんだけど」とローズはメロンパンを一口頬張った。


「うん。評判通り美味しいメロンパンね」


「一口くらいくれる、優しい友人に巡り合いたかったよ」


「あら、これからだってそういう友人、作れるんじゃないかしら?」とローズは横目で言った。


「まあ、私よりも魅力的な友人だといいわね」