とうとう楽しみにしていたクリスマスの夜になった。

インターフォンが鳴り
お兄ちゃんが車で迎えにきてくれた。

「メリークリスマス。寒いから早く車に乗りな。」

車のドアを開けてくれた。

「メリークリスマス!ドア開けてくれてありがとう。」

そうお礼を言いながら車に乗り込んだ。

久しぶりすぎて車内で何を話せばいいのか
わからなくてドキドキする。

運転しているお兄ちゃんは
昔よりさらに大人っぽくなっていて
胸が締め付けられた。

「高台に着くまでもう少しだよ。」

高台に着くまでの時間がとても長いようで
短かった。

「着いたね。」

「運転してくれてありがとう。お兄ちゃん。
 わぁ!綺麗。」

車から降りると雲ひとつない星空が広がっていて
寒くてひんやりとした空に息が白くなった。

他には誰もいないみたいだ。

「私レジャーシート持ってきたから、寝転んで星空
 見たいな。」

「いいよ。じゃあ芝生の上にレジャーシートひいて
 小さい頃みたいに一緒に見よう。」

大きなレジャーシートをひいて、
2人で寝転んでみる。

顔が突然近くなってドキッとした。

「ごめん。近づきすぎた。」

「いいよ。私こそごめんね。」

「寒いからこれお腹にかけな。僕の車にあった
 毛布。」

「ありがとう。あったかいね。」

星が瞬いて今にも落っこちてきそうだった。

「僕の曲、聴いてくれてる?」

「もちろんだよ!私はお兄ちゃんの曲の1番のファン
 だからね。」

「そっか。よかった。君に届いてて。」

お兄ちゃんは優しく笑った。

満点の星空を見ながら、少し沈黙が続いた。

沈黙を割くようにお兄ちゃんは
空を見ながら優しく話し始めた。

「僕はバンドマンとして表舞台に立っているのも
あるけど、君に迷惑をかけるかもしれない。
だけど、僕は小さい頃から
君のために曲を書いて歌ってきた。
君が大人になるまで待ってた。
僕を好きだったら、そばにいて。ずっと。
僕のために。
君を守れるくらい強くなるから。」

お兄ちゃんの方を見ると、目が合った。
耳まで真っ赤で、手で顔を隠していた。

「私、お兄ちゃんのお嫁さんになってもいいの?」

「こちらこそ、なってくれるの?」

初めてお兄ちゃんの可愛い部分を垣間見た
気がした。

いつもしっかりしていて、守ってくれていたから。

私は笑顔でうなづいた。

お兄ちゃんが優しく手を握ってくれる。
温かくて気持ちいい。

また沈黙が少し続いて私から話し始めた。

「誰にも言ったことないんだけど、
 私夢があって、絵本作家になりたいんだ。
 お兄ちゃんを見てたらお兄ちゃんみたいに
 人を幸せにしたいと思った。
 私も頑張りたい。」

「優しくて綺麗な心をしてるから、
 素敵な絵本を作れる。きっと人に届くよ。」

「うん。きっと届けてみせる。」

2人の未来がこの星空のように
きらきら輝いていた。

おしまい