お前の初恋、邪魔はさせない

ガラガラ
「ん、來。もう来たのか?
今はまだ俺と海満しかいない。」
叶だ。
「まじか、そんな早い?」
「早いッスよ〜。」
腹が減ってたのか、
台所にいた海満が顔を覗かした。
「海満こそ、珍しいな。こんな早いなんて?」
「…チッ」
舌打ちの音が聞こえた瞬間、
ガラガラ
「はよ〜。」
眠そうな玲緒が入ってきた。
「はよ。今日はやけに眠そうだが…なにかあったのか?」
少し間をおいて。
「…いや、なんでも?」
「おい、何だ今の間は。」
俺が言うと、
「玲緒にしては不自然な間だった。」
叶も追い打ちをかける。
さらには
「後ろめたいことでもあるんスか〜?」
と、気付いたら机でオムライスを食ってる海満。
その攻撃はすべて図星だったようで、玲緒はすぐに黙り込んだ。
「…うんとかすんとかいえよ。」
「すん!!」
「ふざけるな。」
「お前が言えって言ったんだろ。」
謎のコントが俺と玲緒の間で始まった。
「お前ら、バカなのか?」
叶…鋭い。
ただ、生徒会の中で一番頭がいいやつは叶だから…つまりは叶からみたら全員バカだな。
「…ん?」
時計を見たらもう7時だ。
「そろそろ、近況報告の時間だな。」
「そうッスね〜。」
玲緒もうんうんと頷いている
「んじゃ、叶。パソコンとって〜。俺、操作方法わかんないバカだから。」
笑いまじりで言うと、俺を睨みながら叶がセッティングした。
ポロン♪
「『苑明組』が通話に参加しました」
と表示される。
「苑明組」とは、俺ら苑明学園の
奴らの事だ。
俺らの暴走族は「REAL sea」という名で、
日本各地に拠点を持っている。
その為、近況報告をする際は住んでる地方別で集まって○○組、もしくは○○というように名前を設定している。
『ちーす、苑明達。』
『おは〜。早いね、高校生なのに』
そう聞こえてきたのは、
暴走族の中でも年齢の高めな「仙傘大学」という
頭の悪い大学へと通っている奴ら。
ちなみに、俺らREAL seaの年齢層は基本的に中学生が多い。
いわゆる暴走族に憧れを持ってた奴らだ。
俺らは少し高めで、俺にいたっては副総長を任されている。
総長は、
ポロン♪
「『零下』が通話に参加しました」
零下という、俺らとは離れた場所に住んでいる
『はよ。お前らもう来てたんか。
ちょいとは伝えろや。』
「ReOme」というやつだ。
ちなみに、みんな住んでる場所が
遠からずも違うから、みんなニックネームをお互いに伝えている。
ちなみに俺は「S」だ。
呼ぶ時は「えす」として呼ばれている。
『特にS。お前、副総長の自覚あるんか?総長にちゃんと連絡してや。』
ReOme、厳しいように見えるけど、実はただ単に心配症で寂しがり屋の可愛いやつ。
「はぁ…総長の癖に寂しがり屋とか、いい加減どうにかならないんですか」
叶が
「それはそう。」
海満も
「せめて心配症だけにしてほしいッスね〜」
…ReOme…弱…。
そこに
「総長は特に強い人がなるそれを支える為に副総長がいるだとしても副総長がいない日もある。…総長はどうするつもりなんですか。大体、俺ら同い年でしょう?みっともない。」
玲緒が追い打ちをかけて…
『…言いすぎやろ…』
あ、ReOme拗ねたな。
ま、いいか。
「それで、みんな。最近はどうだ?」
叶が言う。
『確か、喧嘩売ってきたヤツが5人程。団体だったね。』
『俺、こいつとそんときいっしょにいたけど、そいつら俺らの近くの泉明学園の高2だった。』
まじかよこいつ…なんで年齢わかるんだよ。
その俺の心の声を代弁するように叶が
「Km、なんでそいつの年齢
わかってんだよ…。」
って言った
Kmっつーのは、仙傘大学に通ってるヤツの1人。
『ん?流石に近くの学校の制服ぐらい知ってたから、そっから特定した。』
えぐ、流石REAL seaイチの情報屋…
「ま、まぁいいや。俺らの方はナシだな。そもそも寮制で食べ物もあるからあまり外に出ないし、それに学校では暴走族って言ってないからな。」
「そうッスね〜。」
「…あ、もうちょいで
7:20だ。バレちゃいけないし、
俺らはこれで。…sk16。後片付けはよろ。」
sk16。叶だ。
「はいはい。」

「はぁ、終わった〜。」
「お前、どんだけ生徒会の時間憂鬱な訳?…俺はこれからなんだけど。」
玲緒…ほんと、集団行動苦手だよな…。
俺らは生徒会の仕事を少し早めに切り上げて、教室に向かってる。
「いてっ…。」
「?…あ、涼羽。」
玲緒がぶつかった、その女は涼羽夏音だった。
「どっか行くの?…暇だし、手伝うけど。」
…あれ?俺なんでこんな事言って…。
「だっ、大丈夫ですっ!私なんかに時間使わないでください…。」
「あっそう。別に良いけど。」
って、なんか夏音、顔赤い?
…なんなんだ。この気持ち。
「そ、それでは!」
あ…行った。
「…ねぇ、來。あいつとなんかあったの?珍しいじゃん。來から、しかも名前呼びで話しかけるなんて。」
「うるせぇ。知らねぇよ。」
はぁ…俺何言ってんだろ。
涼羽、結局何だったんだろ。
…え、俺今何考えてた?
あーあ、自分でも意味わかんねぇ。
「はぁ…。今日の來、なんかやだ。というか耳赤いし、もしかしてあいつのこと“好き”なの?」
は?こいつ何いってんの…。
…いや、そんなはずない…。
俺が好きなのは、恋愛面ではない、いわゆる“推し”みたいな感じで配信者の涼夏おと(すずなおと)は好きだが…。
「まぁ、そんなわけないよね!あんなやつ、來タイプじゃないでしょ。」
そうだけど…でもこういう事を言われると、夏音の事だとなぜかイラつくんだよな…。
「…」
「…え、マジなの?浮気かなにか?」
「煽るな。あと俺はおと以外の女に興味はねぇ。」
「あはっ。そうだよね。それじゃ、俺4階だから!」
あ、そういえば玲緒って中学なんだっけ。
身長高い方だから、毎回忘れるんだよな。
その時、
「らーいーきゅん!!」
嫌な予感がする…。
「ねぇねぇ、來の事、これから來きゅんって呼んでいい?」
あー、でた。
またあだ名許可貰おうとする…。
前は「來ぴょん」って呼ぼうとしたり「らーくん」って呼ぼうとしたり…。
「だめに決まってる。お前のあだ名「なるる」は前からだからまだ良いとして、俺は今更あだ名を付けられる気はねぇよ。」
ほんっと…幼馴染だからっていって、そこら辺自由な訳じゃない。
「えー…じゃあなんならいいの?」
「今の話聞いてたか?」
「聞いてたし!」
「だとしたらお前、耳鼻科行ったほうがいいぞ。」
「俺、耳は良いよ?」
「嘘つけ。」
「本当だもん!來きゅん、失礼!」
「その呼び方やめろって言っただろ!」
「え?そうなの?知らなーい!」
こいつ…本当に……!!
「チッ…」
「えっ?俺、來きゅんに嫌われちゃった?」
「とっくに嫌いだわ」
「あっ…う、嘘…でしょ?」
…あっ。言い過ぎた…。
「あ、すま…」
謝りかけた時、
「みんな席につけー」
担任の声が邪魔した。
「…後でね、來。」
正直、響がいて、良かったと思ってた。
あいつは、俺の事を全て受け入れてくれてる。
多分、暴走族に入ってるなんか言っても責めないだろうし、副総長なんて言ったら
「え〜?かっこいいー!!」
って言うと思う。
そんな響がいて、嬉しいと思ってた自分もいる。
「…後で謝ろ。」
小さく呟いた。