「本当に助かりました。嘘までついて、助けていただいて······」
わたしがそう言うと、福永さんはキョトンとした表情を浮かべ「えっ?嘘?」と言った。
「あっ、"俺の大切な人"って···恋人のフリをしてくれたって事じゃないんですか?」
自分でそう言うのも照れてしまったが、福永さんはわたしの言葉に笑わず、「あー、そのぉ······」と何か言いたげな様子でこめかみを人差し指で掻いた後、わたしの方に視線を向けた。
「···嘘ではないですよ。桐島さんは···俺にとっては、大切な人ですから。」
「えっ···?」
わたしは戸惑った。
すぐに福永さんが言った言葉の意味を理解出来なかったからだ。
福永さんはわたしの戸惑いに気付き、誤魔化すように「あはは!」と笑うと、「家まで送りますよ。またあの人が来たら困りますからね。」と言い、駐車場がある方向へ歩き出した。
わたしは最初は遠慮しようと思ったが、やはりまた悠史が来るかもしれない事を考えると恐ろしくなり、福永さんのお言葉に甘える事にした。
福永さんは、駐車場にあるたくさんの車の中から、真っ直ぐとある1台に向かって歩いて行った。
それは鋭いヘッドランプに上品さを感じさせる黒いボディーの車で、車に無頓着なわたしはどこの何という車なのか全く分からなかった。
福永さんはポケットからキーレスキーを取り出し、ボタン操作で解錠すると、車のヘッドランプが点滅した。
そして、福永さんは車の助手席側に回ると、助手席側のドアを開けた。
「どうぞ。」
そう言って、助手席に乗れるようわたしを促す福永さんだったが、何となく助手席に乗るのは気が引けてしまった。
しかし、変に意識して断るのも申し訳ない気がして、わたしは「失礼します。」と言って福永さんの車の助手席に乗り込んだ。
内装はレザー調で高級感が溢れており、高級なものに触れて来なかったわたしは、あまりにも場違いな気がしてソワソワしてしまう。
そして、助手席側のドアを閉めた福永さんは、運転席側に回って自分も車に乗り込んだ。
わたしはシートベルトを締めながら、福永さんに向かい「すいません、送っていただく事になってしまって······」と言った。
「いえ、気にしないでください。俺がそうしたいだけなので。心配ですからね。」
福永さんは微笑みなかまらそう言ってシートベルトを締めると、車のエンジンをかけた。



