初恋のジュリア


篠宮さんのその瞳に吸い込まれてしまいそうな程にすっかり心を溶かしていたわたしだったが、ふとある事を思い出しハッとした。

「あっ!それじゃあ、手紙の返事が送れなかった事は···!」

わたしが身を乗り出しそう言うと、篠宮さんは「俺が住所書かなかったせいなので、気にしないでください!」と笑った。

「あの時わたし、焦って"Calm"にログインして、ジュリアを探そうと思ったんですけど、丁度帰って来た母に見つかってしまって···それでパソコンを使えなくなって······」
「そうだったんですね。だから俺、もう一度手紙を出したんですよ!」

そう話す篠宮の言葉にわたしは「えっ···?」と頭の中が混乱した。

(もう一度、手紙を出した?)

頷きもしないわたしの反応に篠宮さんは戸惑いを見せると「あれ?2通目の手紙、届いてませんか?」と言った。
わたしはどれだけ記憶を辿っても覚えのない"2通目の手紙"に「わたしは、受け取ってないです······」と答えた。

「あ、そうだったんですね!俺、住所間違えて送っちゃったのかなぁ。」
「いや、もしかしたらですけど、届いていても、母がわたしに渡さずに隠したのかもしれません。厳しい親だったので······」
「そうですかぁ···、2通も送って、返事を待ち切れずにまた送るのもしつこいよなぁって思って、それ以降は送るのをやめました。」
「ごめんなさい!わたし、手紙書きたかったんですけど······」

わたしが謝ると、篠宮さんは静かに首を横に振り「気にしないでください。」と言って、優しく穏やかな表情を見せた。

それから篠宮さんは、「あ、せっかくのロールキャベツが冷めちゃいましたね!温め直してきます!」と言い、ロールキャベツが盛られたお皿を両手で掬い上げ、キッチンへと入って行った。

(今、目の前に居るのが、ずっと会いたかったジュリアなんだ······)

そう思うと、不思議な気持ちになった。

ロールキャベツを温め直し、食卓に戻って来た篠宮さんは、しんみりし掛けた雰囲気を取り戻そうと、明るく振る舞っていた。
そんな篠宮さんの姿を見ていると、桐島の両親の顔色を窺いながら過ごして来たわたしと重なるところがあり、切ない気持ちになった。

(きっとジュリアも、色んな状況に揉まれながら生きてきたんだろうな······)

わたしには無い、彼の明るさに惹かれた部分はあるが、彼は彼でそうする事で自分を守るしかなかったのかもしれない。
そう思わずにはいられなかった。