「いえ、わたしが出来る事はこれくらいしかないので。」
そう言って、わたしは篠宮さんに続き、玄関からリビングへと移動する。
わたしの前を歩く篠宮さんは振り返りながら「これくらいだなんて、とんでもない!俺は土曜日が楽しみで仕方ないんですよ!桐島さんの美味しいご飯が食べれるので!」と言い、無邪気に微笑んで見せた。
「喜んでもらえてるなら、良かったです。」
「あ、でも楽しみなのはご飯だけじゃないですよ?桐島さんに会えるのも嬉しいんです!」
篠宮さんはそう言って、キッチンへと入って行った。
心の準備も出来ていなかったわたしは、照れてしまうような事をサラリと言われ、何も言い返せずに無言になってしまう。
褒められ慣れていないわたしは、こういう時の交わし方が分からないのだ。
「おっ!今日はロールキャベツだ!」
キッチンでタッパーの蓋を開けた篠宮さんが嬉しそうに声を上げる。
わたしも準備の手伝いをしようとキッチンへ入ると、コンパクトな食器棚の戸を開け、取り皿を取り出した。
四度目の訪問ともなれば、お皿の配置も大体分かってきていた。
「今日のロールキャベツは、コンソメスープで作ってみました。」
「めちゃくちゃ良い匂いしますね!あ、こっちはサラダだ!」
「そっちは、根菜を明太子とマヨネーズで和えてみました。それにちょっと水菜を加えて。」
そう料理の説明をすると、篠宮さんは表情豊かに「温かい内に食べましょう!」と言って、手早くお皿に盛り付けてくれた。
そして準備が整うと、篠宮さんは冷凍庫からキンキンに冷えたグラスを出してきて、テーブルに並べた。
「グラス、冷やしておきました!」
「さすがですね。」
「グラス冷えてた方が絶対美味しいですから!」
篠宮さんはそう言って、冷えて白く曇ったグラスにレモンの缶チューハイを注いでいく。
シュワッと音を立て、レモンの爽やかな香りが弾けるそのグラスを篠宮さんは「じゃあ、乾杯しましょう!」とわたしに差し出した。
それを受け取ったわたしは、今日も「それじゃあ、お疲れ様でーす!」と言う篠宮さんと乾杯をする。
二人ほぼ同時にグラスに口を付け、よく冷えたチューハイを喉へ流し込んでいくと、口の中にさっぱりとしたレモンの香りが広がった。
「美味しい〜!」
わたしがそう言って、よく冷えたチューハイに感動すると、篠宮さんは「グラス冷やしといて正解でしたね!」と言い、それからわたしが作ったロールキャベツを取り皿によそった。



