初恋のジュリア


それから、テーブルの上に並んでいたお皿は完食して綺麗になり、ワインも二人で1本空けたわたしたちは、キッチンに並んで後片付けをした。

人付き合いが苦手であまり積極的ではないわたしだったが、篠宮さんとは緊張はするものの楽しく話す事が出来た。
誰かとの会話が、こんなにも楽しいと感じたのは久しぶりだ。
そう···ネット上ではあったが、ジュリアと意気投合して以来の感覚だった。

そして時刻は、いつの間にかもうすぐ20時を迎えようとしており、すっかり長居してしまったわたしは、「それじゃあ、そろそろ帰りますね。」と言い、玄関へと向かった。

玄関まで見送りに来てくれた篠宮さんは「今日はありがとうございました!肉じゃが美味しかったです!」と力強く言ってくれた。

「いえ、こちらこそ、お邪魔させていただいちゃって···凄く楽しかったです。」

わたしがそう言って、帰ろうと「それじゃあ、」と言いかけた時、篠宮さんが突然「あのぉ!」と言い出し、わたしを引き止めるような仕草をした。
わたしは驚き、篠宮さんを見上げながら目を見開いた。

「あ、あのぉ、もし良かったらなんですけど···来週も、一緒に夕飯食べませんか?」
「えっ?」
「あ!無理にとは言いません!ただ···桐島さんと話してると、凄く楽しくて。それで···―――」

少し照れながら、そう話す篠宮さんの姿にわたしは可愛らしさを感じてしまった。

(篠宮さんでも、照れたりするんだなぁ。イケメンだし、モテそうだから、そういうの慣れてそうなのに。)

照れ隠しの為か、不安そうに後頭部の髪の毛をワシャワシャと掻く篠宮さんに、わたしは「じゃあ、来週も何か作って持って来ますね!」と言い、わたしの答えに篠宮さんの不安な表情は一気に明るくなっていった。

「え!いいんですか?!」
「はい、わたしも楽しかったので。」
「ありがとうございます!わぁー、やったぁ!」

喜びを口に出して表現する篠宮さんの感情の豊かさに、わたしは自然と笑顔になっていく。
肉じゃがを入れていたタッパーを抱えたわたしは、玄関のドアを開けて外へと出た。

そして、わたしはある事に気付き、クルッと振り返って背の高い篠宮さんを見上げた。

「そういえば、篠宮さんの下のお名前聞いてもいいですか?ゲームを予約する為に一応聞いておきたいんですけど。」

わたしがそう言うと、篠宮さんは「あぁ、そうですよね!」と言った後、聞き覚えのある名前を口にした。

「俺、絃世(いとせ)です。篠宮絃世っていいます!」

初めて聞いたはずの名前に、わたしの記憶が疼く。

(え?いとせ?その名前、女の人が夢の中で言ってた······)

その名前は、わたしの夢の中で見知らぬ女性が叫んでいた名前と同じだったのだ。