初恋のジュリア


わたしは篠宮さんの口から"ジュリア"という名前が出てきた事に動揺し、あまりにも興味が無さそうな反応をしてしまった。
ふと我に返ったわたしは、「俺が14歳の時に発売されたゲームなんですけど、」とそのゲームに関して語る篠宮さんの話に耳を傾け、相槌を打った。

「当時めちゃくちゃ流行ってたんですけど、欲しくても父はゲームに否定的でしたし、物を買い与えて貰った事はなくて···ほとんど家にも居ませんでしたからね。でも、その時に既に社会人として働いていた姉が、そのゲームを買ってくれたんです。あの時は嬉しかったなぁ。」

そう言ってワイングラスを傾け、グラス内に残る赤ワインに視線を落とす篠宮さんの表情は、穏やかな微笑みの中にも切なさを含み、お姉さんとの大切な思い出の一つなのだという事を感じさせた。

「素敵なお姉さんだったんですね。」
「はい、俺にとって唯一、味方で居てくれた人だったので。」

そう話す篠宮さんの声色はどこか淋しげで、お姉さんを失くした時の悲しみがどれ程深いものだったのかを物語っていた。

そんな篠宮さんにどんな言葉を掛けたら良いのか戸惑ったわたしは、つい無言になってしまう。
すると篠宮さんは、「あ!すいません、何かしんみりさせちゃって!」と言い、明るく振る舞った。

わたしは「いえ!気にしないでください!」と言いながら、気の利いた言葉一つも言えない自分に嫌気が差していた。

「それでゲームの話に戻るんですけど、"エバー·ファンタジー"のリメイク版、買おうと思ってるんですけど、予約した方がいいですかね?」
「まだ予約開始したばかりなので、予約件数までは分からないんですけど、結構売れそうな予感がするので、発売日に確実に手に入れるなら予約は必須かなと思います。」
「やっぱりそうかぁ。ちなみに、桐島さんの会社で予約する事は可能ですか?」

そう言う篠宮さんの思いもよらない言葉にわたしは「え、うちですか?」と驚いたものの、「出来ますよ。」と答えると、篠宮さんは嬉しそうに「マジっすか?」と言った。

「じゃあ、予約お願いしてもいいですか?」
「はい、もちろん。」
「やったぁ!売上貢献出来ますね!」

そう言って笑いを誘う篠宮さん。
わたしはクスッと笑い、「ありがとうございます!」と言った。

「受け取りはどうしますか?わたし、EOSに勤めてるんですけど、もし篠宮さんの勤務先の近隣にEOSがあれば、そちらの店舗で受け取り出来るようにしておきますし、わたしからの手渡しで良ければ持って帰って来ますけど。」

わたしがそう言うと、篠宮さんは「あ、EOSに勤めてるんですね!じゃあ···桐島さんから手渡しで受け取っても大丈夫ですか?」と申し訳なさそうに言ったのだが、わたしはそんな篠宮さんから申し訳なさを払拭出来るよう「大丈夫ですよ!じゃあ、うちの支店で予約入れときますね!」と出来るだけ明るい口調で答えた。