初恋のジュリア


「姉とは年齢が9つ離れてて、姉が母親代わりみたいなところがあったんです。母は元々あまり身体が強い方ではなかったみたいで、姉を産んですぐに亡くなったと聞きました。」

そう話す篠宮さんの家族構成から、わたしはふと疑問を持った。

(お母様は、お姉さんを産んですぐに亡くなった···?それじゃあ、篠宮さんは···?)

篠宮さんは、頭の中でそう考えるわたしの疑問を察知したかのように「ははっ。」と笑い、「あ、じゃあ、俺は誰から産まれたんだ?って思いますよね。実は俺、姉とは血が繋がってないんです。」と話してくれた。

「そうなんですね。」
「はい。父が会社の経営者なんですけど、姉が生まれる前から跡継ぎの息子が欲しかったみたいです。でも生まれたのは姉で、母は亡くなってしまいましたし、仕方なく俺を養子に迎え入れたんですよ。」

あまりにも複雑な家庭環境の話を、重たい空気にする事なく、明るく話す篠宮さん。
それなら、わたしも気を遣いすぎては失礼になると思い、わたしも思い切って自分の話をする事にした。

「そうだったんですね···。実は、わたしも両親とは血が繋がってないんです。」
「え、そうなんですか?」
「わたし、孤児院育ちなんです。それで10歳の時に、育ての両親に引き取られて。」

わたしがそう話すと、篠宮さんは驚きつつも「一緒だ!俺も元は孤児院に居たんですけど、物心がつく前に父に引き取られたんですよ!」と話してくれた。

「まさか境遇が似ているなんて、偶然ですね。」
「本当!親近感湧いちゃいます!」

そう言って、笑い合うわたしたち。

篠宮さんとは、一気に距離が縮まったような気がして、嬉しさからワインが進んでしまう。
さっきまでの緊張が解けたせいかお腹が空いてきてしまい、わたしはサーモンとオニオンのサラダを頂いた。
篠宮さんが用意してくれたサラダも、普段食べられないようなお洒落な味がして美味しかった。

「あのぉ、ちょっと聞きたい事があるんですけど、いいですか?」

わたしがそう言うと、篠宮さんはにこやかに「何ですか?」と言った。

「お邪魔してから一番最初に目に付いたんですけど、」

そう言ってわたしはふと横を向くと、大型テレビのすぐ横に掛けられていた、タペストリーを指差した。

「あのキャラクターって、何かのアニメのキャラクター何ですか?」
「あぁ、あれはゲームのキャラですよ!」
「ゲーム?」
「はい、昔好きだったゲームなんですけど、"エバー·ファンタジー"っていうゲーム聞いた事ないですか?」

篠宮さんの言葉に、わたしはふと思い出す。

("エバー·ファンタジー"って、リメイク版が発売予定のあのゲームだ。)

「確か、リメイク版が発売予定されてますよね?」
「そうですそうです!知ってたんですね!」
「わたし自身はゲームした事ないんですけど、仕事の関係でゲーム関連の事を調べたりするんです。」
「そうだったんですね!あのキャラは、"エバー·ファンタジー"の主人公のレオンの初恋相手で、"ジュリア"っていう···―――」

篠宮さんがそう話した瞬間、わたしの中の時間が一瞬止まった。

(え、"ジュリア"?)