初恋のジュリア


箱の中には、2つの杏仁豆腐が入っており、わたしはその内の一つを取り出した。
袋には付属のスプーンも入っており、スプーンを手に持ったわたしはその杏仁豆腐を一口分掬い取った。

そして、その掬った感触からわたしが好きなタイプのプルンとした杏仁豆腐だという事が分かる。
わたしは"なめらか"タイプよりも"プルンと"タイプの杏仁豆腐の方が好みなのだ。

掬い取った杏仁豆腐を口へ運ぶと、程良い甘さが口の中に広がり、くどくないサッパリとした後味にわたしは自然と「美味しい。」と呟いていた。

(この杏仁豆腐好きだ。でも篠宮さん、何でわざわざ杏仁豆腐を買って来てくれたんだろう。)

差し入れとして定番とは言えない杏仁豆腐に疑問を抱きながらも、スプーンを持つ手が止まらず、わたしはあっという間に一つを完食してしまった。

(この勢いだと、2つ一気に食べれるけど、勿体ないから取っておこう。)

わたしはそう思い、もう一つの杏仁豆腐を箱ごと冷蔵庫へしまった。
冷蔵庫の中には、篠宮さんから頂いた杏仁豆腐の他に、"ドール"という珈琲ショップの紙パックに入った杏仁豆腐が常備されている。

実は杏仁豆腐は、わたしの好物の一つなのだ。

それからわたしはスーパーで買って来たお弁当を食べ、お風呂をシャワーのみで済ませると、久しぶりにテレビをつけて、21時から地上波初放送と言われる映画アニメを観ながら夜更かしをしたのだった。





『―――···がいします、お願いします!助けてください!』

泣きそうな表情で必死に助けを求める黒髪の綺麗な女性。

手を伸ばし、わたしの腕を掴もうとしながら叫んでいる。

『お願いします!助けてください!どうか、いとせを···いとせを···!!!』




「――――っは!!!」

目が覚めると、わたしは天井を見上げながら詰まり欠けていた息を吐き出し、ゆっくりと呼吸を繰り返した。

(まただ···またあの夢だ······)

わたしは最近同じ夢をみるようになっており、この夢をみたあとは何故か身体が重く酷く疲れていた。

("いとせ"?···何だろう、人の名前かな?あの女性は誰なんだろう。)

そう思いながら再び目を閉じたが、夢が気になり二度寝をするには頭が冴えてしまい、わたしは仕方なくベッドから身体を起こした。
欠伸をして両腕を上げながら伸びをすると、窓の方へ顔を向ける。
カーテンの隙間からは光りが差し込み、既に朝を迎えている事を知らせた。

昨夜は久しぶりに夜更かしをしたのだが、自分が思っていたよりも長くは起きていられず、0時前には布団に潜ってしまっていた。

(今日は外に出るつもりもないし、掃除して、おかずの作り置きでもしようかな。)

そう思い、ベッドから下りたわたしは寒さに身震いをし、寝室から抜け出すと、顔を洗う為に洗面所へ向かった。