初恋のジュリア


そのあとすぐにミーティングを終えた福永さんが戻って来た。
福永さんは、わたしの浮かない顔に気付いたのか「桐島さん、」と話し掛け、何かを言おうとしていたが、それを深川さんが「福永さん!ミーティングお疲れ様ですぅ〜!」と遮った。

深川さんは福永さんの元へ急ぎ足で歩み寄ると「ミーティングお疲れ様ですぅ!」と話し掛け、福永さんがわたしの方に意識が向かないよう誤魔化しているように見えた。

(さっきの意地悪が福永さんにバレたら、都合が悪いんだろうなぁ。)

そう思いながら、わたしは定時を迎えるギリギリまで通常業務を続けた。

定時18時丁度になると、5分前から帰る支度を済ませていた人たちが「お疲れ様でした!」と次々と帰宅していく。

(今日はわたしも早く帰ろう。)

そう思い、早々に片付けを済ませたわたしはロングコートを羽織り、首にマフラーを巻くと、仕事用のトートバッグを肩に掛けて一番最後に会社を後にした。

すっかり暗くなった帰り道は風が強く、耳元でビュービューと風鳴が聞こえた。
わたしは帰宅途中にあるスーパーに立ち寄ると、夕飯用に割引シールが貼られたお弁当とチューハイを2缶購入して帰路についた。

耳が痛くなる程の冷たい風に吹かれ、早足に帰宅したわたしは、真っ先にストーブを付け、脱いだコートとマフラーを片付ける。
そしてやっとソファーに腰を下ろし、「はぁ······」と疲れを吐き出したわたしは、スーパーで買って来た缶チューハイのプルタブを引いた。

よく冷えた缶チューハイを口へ運び、ゴクゴクと音を立てながら喉に流し込んでいく。
わたしはそれ程、お酒が得意という訳ではないのだが、嫌な事があった日は無性にお酒が飲みたくなるのだ。

それからスーパーで買って来たチキン南蛮弁当をレンジで温め、独りの夕飯を済ませる。
あとは簡単にシャワーでお風呂を済ませ、少しだけテレビを観てから寝室へ向かい、ベッドへと潜り込んだ。

こうして、いつもと何ら変わらない週初めの一日を終えたのだった。

そんな毎日の繰り返しで、また週末の金曜日を迎える。
すると、その日の就業時間後、平日の疲れを抱えたわたしに福永さんが声を掛けた。

「桐島さん、お疲れ様です。」

帰ろうとしていたわたしはふと顔を上げると、福永さんに「お疲れ様です。」と返す。
すると福永さんは「これから飲みに行きませんか?」とわたしを誘ってくれた。

特に予定も無かったわたしは「はい。」と返事をすると、疲れ顔から作り笑顔を浮かべ、福永さんと共に会社から中心部の方へ向かうとある、入り口前に赤提灯が並ぶ居酒屋へと入って行った。