魔力を固めると箱になるんだもん

 魔力は球体になる。
 それがこの国――スフィアでの常識だ。


「さあ試験だよ、ミント。準備はいいかい?」

 優しい声でそう言った先生――本日の試験官でもある――に、あたしはニッコリ笑って頷いて見せた。
 部屋の中にはあたしと先生のほか、立会に派遣されてきたラベンダーという名のお姉さんだけで、正直なところ緊張感はまるでない。むしろ村に美人で都会的なお姉さんが来ているという物珍しさから、あたしはちょっぴり浮かれてしまっていた。

 今からするのは試験だけどね。
 しかも、この結果であたしの将来の道が決まるらしい大事な試験。
 七歳になったら誰でも避けて通れない、すっごく大事な日。わかってるのよ、ちゃんと。

 でもさ、仕方ないじゃない?
 こんな田舎にお客様が来る機会なんてめったにないんだもの。緊張どころか、むしろ張り切っちゃうよね?

「任せて、お父さん」
「そこは、先生、な?」
「はーい、先生」
「よし、じゃあ始めよう。手のひらを上に向けて」
「はい」

 元気に手をあげて見せたあたしは、お父さん……げふん……先生に言われた通り、手のひらを上に向けて魔力を貯めていく。
 魔力はほとんどの人が当たり前に持っているけれど、その力のどれが強いか、もしくはないかで進む道が決まってくる。
 今あたしがやってるのはその適正を見るための試験で、七歳になるとみんなするものなのだ。
 ちなみにお父さんは村で唯一の魔法の先生でね、今年七歳になるのはあたしだけなんだ。

「じゃあ一番貯めやすい魔力を出していこう」
「はいっ!」