「……そっか、学校は今日も変わらずなんだ」
その日から夜、踏み切りが上がるまでの三分間佐藤くんと話をするのは日課のようなものになっていた。
「まぁ、そう簡単に変わらないって、先生が動いてくれるわけでもないし、親にも言えないし、でも飽きたら止めてくれるかもしれないからそれまで我慢」
だけど大概話しているのは私だけで、学校でのいじめとか成績が下がって母に怒られたとか、そんな愚痴が大半だった。
「……強いね、相沢は」
それでも佐藤くんは一回だってそれを責めたり、急かしたりすることなく聞いてくれて、それからこんな風に私を元気づける言葉をくれる。
「強くなんてないよ、弱いから、虚勢を張って平気なふりして笑ってるだけ、私は一度折れたら立ち上がれないから」
そう、いじめを気にしていないように振る舞うのも、寝る時間を削って勉強するのも一度折れてしまったら立ち上がれないということを自分が一番よく理解しているから、それだけが理由で、それしか理由なんてない。
「……俺は、もう折れてる側だから何も言えないな
、ただの不登校の負け組だし」
「佐藤くんは立ち向かったじゃん、ちゃんと自分で、目を反らさずに」
私は佐藤くんの自虐につい、言い返していた。
佐藤くんは私と違ってちゃんと戦っていたことを知っているからこそ、言わずにはいられなかったのだ。
「……」
「何その目ー」
「いや、覚えてたんだなって……」
「私一回も忘れたなんて言ってないでしょー、ちゃんと覚えてる、自分の言った無責任な言葉も全部」
私は佐藤くんの生暖かい目線に一度からりと笑ってから今度は軽い自責の念に駈られて自嘲する。
そう、佐藤くんが不登校になったのはおそらく、きっと、私の言葉のせいなのだから。
その日から夜、踏み切りが上がるまでの三分間佐藤くんと話をするのは日課のようなものになっていた。
「まぁ、そう簡単に変わらないって、先生が動いてくれるわけでもないし、親にも言えないし、でも飽きたら止めてくれるかもしれないからそれまで我慢」
だけど大概話しているのは私だけで、学校でのいじめとか成績が下がって母に怒られたとか、そんな愚痴が大半だった。
「……強いね、相沢は」
それでも佐藤くんは一回だってそれを責めたり、急かしたりすることなく聞いてくれて、それからこんな風に私を元気づける言葉をくれる。
「強くなんてないよ、弱いから、虚勢を張って平気なふりして笑ってるだけ、私は一度折れたら立ち上がれないから」
そう、いじめを気にしていないように振る舞うのも、寝る時間を削って勉強するのも一度折れてしまったら立ち上がれないということを自分が一番よく理解しているから、それだけが理由で、それしか理由なんてない。
「……俺は、もう折れてる側だから何も言えないな
、ただの不登校の負け組だし」
「佐藤くんは立ち向かったじゃん、ちゃんと自分で、目を反らさずに」
私は佐藤くんの自虐につい、言い返していた。
佐藤くんは私と違ってちゃんと戦っていたことを知っているからこそ、言わずにはいられなかったのだ。
「……」
「何その目ー」
「いや、覚えてたんだなって……」
「私一回も忘れたなんて言ってないでしょー、ちゃんと覚えてる、自分の言った無責任な言葉も全部」
私は佐藤くんの生暖かい目線に一度からりと笑ってから今度は軽い自責の念に駈られて自嘲する。
そう、佐藤くんが不登校になったのはおそらく、きっと、私の言葉のせいなのだから。

