天使と悪魔~私、ヤクザの愛人になりました~

「……ったく、心ももっと情報をよこせよな。」


私を押さえていた鷹也さんの両腕からは力が抜け、シートも元に戻されました。私の思い…少しは分かっていただけたのでしょうか。


「君を見たときも心から話を聞いたときも偽善者という言葉しか感じられなかった。優しいだけの人間は、いつの時代も早死にする。その存在のせいで、組自体が潰されたら、なんて考えていたんだ。ちょっと脅せば動転して離れるかと思ったのに……大した度胸だよ。天ちゃん、君は亜魔野組をどんな組にしたいと思う?率直な意見でいい。聞かせてくれ。」


「私が組を動かすわけではありませんから、いい答えを示せるかは分かりません。ですが、私が心さんと目指していきたいのは、優しく温かみのある家族のような居場所です。世界中にマフィアやヤクザがいて、皆さんが非道な人間だと殺し合いしか生まれません。ヤクザや極道だからと言って、非道でなければいけない理由はないと思っています。人生に迷い、自分の居場所を見失ってしまっているような人に寄り添える……そんな組になれたら、私は嬉しいです。」


「所詮ヤクザや極道は嫌われる存在だ。今までもそうやって、社会から省かれてきた。それなのに今さら優しさを掲げて、認めてもらえると思うか?」

「さあ、それは試してみないことには何も動かないでしょう。時代は常に変わり続けています。暴力に明け暮れていたら、積みあがるのは屍だけです。それで誰が喜びますか?ヤクザがいる意味は、領域の治安を守ることだとお聞きしたことがあります。今まで積み上げてきたものが血にまみれたものなのだとしたら、これからは人々に受け入れてもらえるようなものを積み上げていけばいい。和解するまで、何年、何十年とかかるでしょう。それでも、目指すべきものがあるなら、諦めずに挑み続けることが未来へと繋がると信じています。」






「……俺の負けだ。君がそこまで恐ろしい子だとは思わなかったよ。君が言うなら、そんな未来も来そうだな。俺は力になれることなんてないだろうが、亜魔野組若頭、亜魔野心を支える存在になってくれ。手使天。」