天使と悪魔~私、ヤクザの愛人になりました~

何事もなかったかのように朝食を作り終え、着替えていると鷹也さんが私を迎えに来ました。2人で出かけることは内密ということで、鷹也さんが運転する車で屋敷を離れます。



「君、本当に危機感がないんだね。心以外の男と2人きりになるなんて、危ないことだよ?」
「そうでしょうか……?鷹也さんは私に興味などないでしょう…?手を出そうだなんて考えていないと思いますし、あくまでも鷹也さんが見たいのは私が極道の世界に相応しいかどうかということだけ。」

「へえ、どうしてそう思うのかな?」
「襲う気があればとっくに襲っているでしょう?それに、鷹也さんは私に対して何かを求めているんじゃないですか?」
「なかなかいい読みをしているね。でも、こういうのはどうかな?余裕を見せている女性を組み敷いて、無理やり襲うのが好きな人間もいるんだよ。」


鷹也さんが私の上に覆いかぶさります。シートを押し倒し、無理やり唇を重ねられました。


「キスも下手だね。こんなんで心を満足させてるつもりか?」
「鷹也さん……本当に私を抱くおつもりですか?」

「ああ、そうだよ。君、体の方は悪くないし、心以外の男に抱かれる恐怖を味わってほしいからね。」
「そうですか、わかりました。」


鷹也さんの右手を掴み、自分の胸へと押し当てる。このような恥ずかしい行為、心さんの前でもしたことがありません。ですが、鷹也さんが無理やりにでも私を襲うと言うのであれば、私も反抗しないわけにはいきません。


「ほら、淫乱な君が出てきた。男の手で触られるのが好きなんだろ?」

「私にとって、触られてドキドキするのは心さんだけです。私があなたの手を掴んでいるのは、心さん以外の人では私の身体は反応しないということを伝えるためです。鷹也さんがお望みでしたらこの着物も脱ぎますよ。」


「そこまでして、心との関係を認めてほしいのか?」

「それもありますが、私からも伝えたいことがあるんです。鷹也さん、叔父貴という存在がどれだけのものかを私は知りませんが、あなたに私たちの仲を引き裂くことはできません。心さんと私は愛し合っています。鷹也さんには、理解できない感情なのではないですか?ご自分が分からない感情だからこそ、その感情が満ちる前に壊そうとする。どのような女性も同じだと思っているみたいですから、私も男性に堕ちたほうが都合がよろしいんでしょう?」
「急に怖い女になったねえ。俺を欺いていたのか?」


「欺いた覚えはございませんよ。ただ、考え続けたんです。どのような女性になれば、心さんに相応しくなれるのかどうか。立派な姐さんになれるのかどうか。たしかに私はただの学生です。戦力にもなれない、ただの女です。それでも、好きな人と一緒にいたいと願うのは、極道でもあってもなくても同じことです。私は今まで優しさというものにこだわり、生きてきました。優しさを与えることが正しいことだと。でも……この世界に入って、優しさというものは利用され付け込まれるものなのだと痛いほど感じました。心を痛めたこともあります。たしかに、組から離れ普通の生活を送れば、残酷な世界から離れることはできるかもしれません。しかし、それって本当に幸せな人生なのでしょうか?私の人生は私だけのものです。それなら、好きなように生き、愛する人と共に死にたいです。」


「何があっても心から離れないと言うのか……?」

「もちろんです。心さんが死ぬまで私の元から離れないというのであれば、私もこの身が散って消えるまで……いえ、散っても永遠に私の思いは心さんに寄り添うでしょう。本気で鷹也さんが私を追い出したいのであれば、それは構いません。ですが、必ず認めていただけるよう、私にできることを尽くすのみです。」