天使と悪魔~私、ヤクザの愛人になりました~

「照子さん、もうお帰りだなんて寂しいっすよ!」

「大地、甘ったれたこと言いなさんな。お前はもう、亜魔野組の立派な一員だ。組のためにも、天を守るんだよ。」


ご両親が来てから時間が経つのはあっという間で、気づけばもう21時です。車のお見送りが終わると、余韻に浸りながらも片づけをする舎弟の皆さん。


「姐さん、照子さんに気に入られましたね!やっぱり姐さんは魅力的なんすよ。」
「そうなんですかね……私はただ、思ったことをそのまま伝えてしまったので、怒られないかとヒヤヒヤしましたよ。」


「次は天の両親への挨拶だな。日にちは明後日のままで大丈夫か?急なことだろうし、いくらか調整はできるが……。」
「いえ……紹介したい人がいるといったら、両親も会いたがっていたので大丈夫かと。」


「組の者っていうのは伝えてあるのか……?」
「なんて伝えたらいいか分からなくて、まだ言えてないんです……それに、私が勝手に伝えるよりも、心さんに直接伝えてもらうほうが誤解とかもなくていいかなと……。」

「手土産の量を増やしておくか……後で心と相談しておく。」

「姐さん、もしかして緊張してます?」


「大地くん……実はちょっと。久しぶりにおばあ様と会うんです。私のことを大切に育ててくれた人です。私に、優しさを持って生きるよう教えてくれた人です。」


「もしかして、郁人とのことが頭によぎってる?優しさを与えた相手に裏切られて……どう話せばいいのか。」


どうやら、光さんには全てお見通しのようですね。今までは、人に優しくすることを正しい行いだと思えました。でも……今の私にとっては、優しさは呪いです。どんな顔でおばあ様と話し、何と言えばいいのか、不安が募ります。



「俺は別に、言いたいことをそのまま言えばいいと思うがな。俺は自分から家を出た身だから天の気持ちを分かってはやれんが、天にとって大切な人なら向き合って話すだけでも十分だと思う。」

「まさか、光さんからそんなに素敵な言葉が聞けるだなんて……。」

「京子と再会するまでは、家族のことなんて思い出すことはなかった……家が嫌で抜け出して、自分から本当の家族を捨てたんだ。だから……後悔していることもある。京子と会った時、焦る気持ちが大きかった。妹を……こっちの世界に引き込むようなことはしたくなかったからな。それでも、嬉しい気持ちもあった……大きくなった京子を見られて、安心した。ヤクザも家族だが、本当の家族に勝るものはこの世にはない。だから、家族のことを大切にしてやれよ。」



「はい……思うことを全て、話してみようと思います。」




おばあ様……きっと今の私はもう、善人ではありません。ですが、どうか私の心を受け止めてください。私が選んだ、これからの人生を……。