天使と悪魔~私、ヤクザの愛人になりました~

「随分早く来てくれましたね……亜魔野組若頭さん。軍を率いてくるなんて、よほどお怒りかな?」

イクトくんに連れられて屋敷の表へ出ると見覚えのある車が並んでとめられていました。

もう会えないと送ったのに何で……


「天と京子を返してもらおうか。お前らの望みは何だ?うちとの取り引きだけじゃ満足できないって顔だな?」
「僕が一番欲しいのは天ちゃんですよ。分かってるんでしょ?」


「どうやら話し合いじゃ解決できねえみたいだな。」
「ここは分かりやすくショータイムといきましょう。殴り合って殺し合う、原始的で野蛮な方法がいい。」


イクト君の言葉で、殺し合いが始まりました。今までに見たことの無い、ヤクザの姿。こんな殴り合いをして……殺し合って……何のためになるんでしょうか。



「天ちゃんは初めて見るのかな?これがヤクザの本当の姿だよ。組の誇りをかけて殺し合うんだ。本当に残酷な世界だよね。亜魔野組にずっといたら、これからもこういうことを見ることになるんだよ。」

「イクト君と一緒にいれば、こんな残酷な世界は見なくていいってこと…?」
「もちろんだよ。僕と一緒になれば、全部部下が始末してくれる。天ちゃんには綺麗な景色しか見せないよ。」



たしかにこんな地獄絵図をこれからも見ていかなければいけないと思うと心が苦しくなります。私には、何のために殴り合い戦うのかを理解することは難しすぎます。


でも……


「本当に面白いよね、殺し合いって。これで本当に天ちゃんとあの女を取り返せるつもりでいる。」

「イクトくん……今のどういう意味……?」



「あっははは……本当に天ちゃんは幸せな世界に生きてるんだね。僕が本当にあの女を取り返すと思ったの?」
「え……?」

「自分が犠牲になるから、他の人を巻き込まないでって…本当に悲劇のヒロインだよね。まさか僕が見抜いてないと思ったの……?」
「それならなんでこんなこと……。」

「僕ね、残酷なことが大好きなんだ。殺し合って血を流すのが大好き。惨めな姿になって首を垂れる姿なんて最高だよ。その景色
を……愛する天ちゃんと一緒に見たかったんだ。だって、僕の全てを知ってほしいもん。」


イクト君の言葉に全身が震え出します。まさか私を攫ったことも、京子さんを売り飛ばしたことも……心さんたちがここにいるのも……イクト君が残酷なことを楽しみたかったから……?


そのために、たくさんの人を巻き込んだんですか……?


「また、天ちゃんを泣かせちゃうかな…?でもすぐに慣れるよ……大丈夫、怖いものなんて何もないよ。」
「イクト君……ダメだよ。こんなことしちゃダメ……今すぐやめさせて。やめさせてくれないなら、イクト君のこと、嫌いになるよ……。」


「もしかして駆け引き……?そんなの僕には」
「私は本気だよ!」


その言葉と共に飾られていた短刀をイクト君に向ける。イクト君が本気で残酷なことをするために、私だけじゃなく皆を巻き込んだというなら、許せません。

「ふふっ、嬉しいな、僕と殺し合いをしてくれるの?でも、ちゃんと武器は選ばないと……僕にはこういう武器があるんだから。」




イクト君の手に握られている拳銃。銃口は私に向けられています。