天使と悪魔~私、ヤクザの愛人になりました~

あれからこの男の人の事務所へ連れてこられました。たくさんの人たちに囲まれていて明らかに怖い雰囲気。

「そこに座れ。」

「はい……。」


「お前……その服、カトレア女子大の制服だろ。なんでそんなお嬢様がこの町にいんだよ。」
「友達に……お遣いを頼まれたからです。」

「お遣い…?」
「冠木町にある零という店に行って、受け取ってほしいものがあると言われました。」

「お前、いつもそういうことしてんの?」

「はい……大切な友達ですから。」

「俺が言えることじゃねえけどな、お前もっと人を疑ったほうがいい。」


「え…?」


「お前、騙されてる。多分お前が頼まれたのはお遣いじゃなくて運び屋だ。零の店は麻薬売買、カジノで有名だからな。」
「皆はそんなことするような人ではありません!憶測で言わないでください。」


「ふーん……じゃあ、何でお前1人だけなんだよ。こんな町に1人で来るような女はほとんど見たことない。ヤバイ街で有名だからな。零の店に行くよう言われてるなら、お前は生贄だってことだ。お前みたいなやつな、世の中ではパシリって言うんだよ。」

「貴方にそのようなこと言われる筋合いはありません。」


「そうだ……俺がお前を助ける義理はない。でもな、俺の領域で問題起こされたら俺の面目が丸つぶれだ。それにお前も本当は分かっているんじゃねえのか?自分がただ利用されているってことに。」
「そんなこと……。」


「無いって言えるか?こうやって遣いだのなんだの頼まれんのは今回だけじゃねえんだろ?」

「私は……正しいことをしているだけです。善い心を持てば必ず正しい道を拓くことができる。その教えに従っているだけです。」


「ならお前に教えてやる。優しさだの善い心だのこの世にはねえんだよ。人は裏切るし利用もする。そんな甘い世界じゃねえ。それにな、持とうと思って持つ善い心は偽物だ。お前はただ偽善ぶっているだけなんだよ。」



違う。そう思うのに何も言い返すことができないのは何で……?


「それより、話は金をどう払うかだ。身でも売るか?5000万をどう払う?」

「働いて……払います。」

「一般的な模範解答だな。だがな、俺らの世界ではそれほど信じられねえ答えはねえ。」
「ではどうすれば……。」




「お前、俺の愛人になれ。」