天使と悪魔~私、ヤクザの愛人になりました~

―昼休み―

頼まれた通り冠木町に向かい駅から出ると、怪しい雰囲気を纏った店が並んでいます。こういうところでの買い物は初めてなので緊張します。


「あ~……。」


声がするほうを向くと段ボールの上に寝転がる男性たちがいました。お仕事などしていないのでしょうか……


「このようなところで寝ていては体によくありません。お仕事はないのですか?」
「仕事~?んなもん2年前から無いよ。金がねえから家もねえ。食えるもんもねえ。こうやって暮らしてんだ。」


「それは大変です。少ないですがこれ、使ってください。」



慌てて自分の財布からお金を出し男性に差し出す。すると男性の顔は明るくなっていった。



「あんたはいい人だな。助かるよ。」



男性が私の手から金を受け取ろうとしたそのとき―――――――



「おら、てめえら俺の縄張りで何やってんだ。」

「ひい……俺ら、家が無いもんでこうやって暮らすしか……。」
「じゃあ所馬代を払え。1人500万だ。」



なに……この人。家も食事もないこの人たちからお金を奪おうと言うの……?


「払えねえならこっから出ていけ。金のない奴はいらねえんだよ。」

「やめてください……。この人たちは生活に困っているんです。」

「お前、初めて見る顔だな。何だお前は。」
手使天(てづかそら)と申します。」

「へえ……じゃあお前がこいつらの所馬代払うか?1人500万だとして、ここには10人いる。占めて5000万だ。」



5000万……そんなお金…あるわけがありません…。



「払うか払わねえか聞いてんだよ。」



どうしましょう。でもお金を払わないとこの人たちはもっとひどい目に遭います。




「払います……そうすれば、この人たちに何もしないんですよね……?」

「随分正義感にあふれてんだな。だが、そいつらはお前の事なんかどうでもいいみたいだぜ。」




そう言われて後ろを振り返ると、先ほどまでいたはずの男性たちは消えていて段ボールだけが残っていた。



「つまりお前は金のために売られたってわけだ。」

「そんな……。」


「さあ、金を払ってもらおうか。」