天使と悪魔~私、ヤクザの愛人になりました~

天の家族が殺された。その言葉を聞いたとき、私は何も言えなかった。かける言葉が見つからず慰めることもできなかった。ヤクザに関わったせいで大切な人が殺される。そんな目に遭ったら……私だったら立っていられなくなる。何も考えられなくなる。


「京子さん…私は大丈夫ですよ。」



天はいつも自分のことを表に出さない。自分の中に閉じ込めてしまう。一人で抱えて立っているだけでも辛いはずなのに誰にも弱いところを見せない。どれだけ絶望の淵に立っていてもそれを悟らせない。


たしかにこういう世界には向いているかもしれない。


だけど……天にはずっと笑っていてほしかった。幸せでいてほしかった。



四霊を潰すことができたら少しは天の心の傷を癒せるんだろうか。少しでも役に立てるんだろうか……。




「天のことは私が絶対に守るから。だから、こんな時にまで強がるな。」



天の代わりに私が泣いた。泣き叫んだ。これは天の痛みが分かるからだけじゃない。今までずっと助けることができかった自分への怒りでもあった。




「兄貴……亜魔野さん……サシで勝負できないの?組に乗り込もうとしたことも潜入調査も失敗に終わった……これ以上長丁場になるなら組の人たちがいつ死んだっておかしくない……ヤクザは死と隣り合わせだっていうけど、いつまでその考えを押し通せる?」


「四霊はただのヤクザじゃない。非道といわれるヤクザの中でも頂点に君臨する。勝率が低い賭けを起こす方が死者の数は増える。」
「だけど今のままじゃ……」


「まだ俺の話は終わってない。今までの亜魔野組は勝率の低い賭けはしてこなかった。それでも統率がとれていたし仕掛けてくる組もいなかったからだ。だが今回は違う。例え生き残るのがたった一人になるとしても勝負に出なければ勝ち目はない。今夜21時までに準備を終わらせろ。再び奇襲を行う。いくらか奴らの取引場所は掴んでいる。取引現場に乗り込み必ず殺す。今回は何があっても引かない。四霊の奴ら全員始末する。京子、お前が先陣を切れ。」



「私が……仕切るのか……?なんだよ……私に死ねって言いたいのか?組の連中じゃなくて私に任せる……?何を考えてるんだよ?」
「お前の冷静な判断に全てを賭ける。お前の戦闘力、判断力、そして何があっても天を守りたいと願う心意気を買ってやる。自由にやれ、天のために戦え。」