「ちーさっ!おはよっ!」

校門に入って少ししたところで、雅が私の左腕に抱きついてきた。

すっかり恒例となったその行動に私もすっかり慣れ、そのまま歩き続ける。

「雅おはよう」

「うん!あ、ねぇねぇ千紗、最近、〝ランちゃん〟が出るみたいだから気をつけてね〜!小学4年生の幽霊っ!」

腕を離し、両手を前にだらんと出して幽霊ポーズした雅。

「そ、そうなの?」

「うん。なんかね、ランちゃんってだれもいない公園のブランコをこいでるんだって〜。ブランコが好きだったみたい。そ・れ・で!!ランちゃんの視界に入った子は、死ぬまでランちゃんの遊び相手にさせられるの!!」

「え、こわっ。ランちゃんに会ったらもう終わりじゃん。てか、ランちゃんの遊び相手になったらどんなことされるの?」

「さぁ?そこまでは分かんないけど…そうだ、ランちゃんに会った時の対処法なら分かるよ〜!」

「対処法あるんだ!なんなの?」

「ランちゃんは過去になにかあったみたいだから、その話を聞いて解決策を出してあげるの。完璧な策じゃないと殺されるみたいだけどね〜…」

「えっ、そうなんだ…」

地味にハードルが高いな…。

「だよね〜、あっ、ランちゃんって頭にコブがあるみたいだから、それがヒントになりそう」

「そうだね…」




– –「また遊び相手がふーえたっ!ランうれしいなぁ」

「っ…!ラン、ちゃん…」

雅とランちゃんの話をしてから、数時間が経った。

塾帰りで遅くなった私は、帰り道の途中にある倉田公園を通った時にランちゃんの視界に入ってしまったのだ。


– –ザッザッザッザッ– –

ニコニコしながら近づいて来るランちゃん。

公園内にも近くにもだれもいない。

逃げてもランちゃんには遊び相手認定をされてしまっただろうから、いずれ捕まる。

八方塞がりだ。


でも– –私は諦めていなかった。


『ランちゃんは過去になにかあったみたいだから、その話を聞いて解決策を出してあげるの』


雅の言葉が脳内で再生される。

そう– –ランちゃんの過去の話を聞き、完璧な解決策を出せば、彼女の遊び相手にならなくて済むのだ。

むろん、これが簡単ではないのは分かる。

でも、ランちゃんが納得する解決策を出してみせる。

遊び相手になりたくないのもあるけど– –彼女の過去を、頭にコブがある理由を知って寄り添いたいんだ。

解決策を出したいんだ。




私は、目の前に来たランちゃんと目線が合うようにしゃがみこんだ。