君がホシイ

 
あと2週間ほどで桜が咲く。3月になっても春のいぶきをまったく感じられない入試当日、一人の女の子に恋に落ちた。

「チャイムが鳴ったらスタートです」
私立も含めたら何度このセリフを聞いただろうか。

、、、できるならここで最後にしたいが。

「では始めてください。」
ページを捲る音、シャーペンで何かを書く音。部活を引退してから半年。この日のこの時間のために必死に準備をしてきた。負けるわけにはいかない。だれにだって。

「終了です。ペンを置いてください。」
出し切れた、この半年の分を、

「次の時間ってなんだっけ?」
「昼休みでしょ。で、その次が英語」
「あ、そうだ、、、ねぇ!大丈夫!?」

緊張しすぎてか倒れてしまった子に駆け寄っていく。
「聞こえますか?おーい。ごめん、先生呼んできてくれない?」
「わかった。言ってくる」

「呼吸もしてる、心臓も動いてる。えっと、心肺停止じゃないから心臓マッサージはしなくてよくて、、、」

ひとりで必死に助けようとしている。一生懸命で、そんなところが可愛くて、あぁ、私があの子を守ってあげたい。笑ってほしい。
あの子のことを考えるとどんどん胸が高鳴っていく。あぁ、きっとこれが恋なんだ。

あの子と高校生活を過ごしたい。一緒に放課後遊んで、お泊まり会もしてみたい。
あの子は、附属中学校の生徒なのだから、落ちるはずはない。

「私が受かるかどうか、だね」