恋と三日月

今日もまた、王子様が迎えに来てくれるのを待つ。
暗い海のような、苦しい場所から救ってくれた、私だけの王子様のことを。

「じゃあお母さん出るからね。ちゃんと学校行きなさいよ。」

仕事大好き人間のお母さん。ちなみにお母さんは医療系の仕事だからか、給料が良いみたい。
お母さんは、『医療系』としか教えてくれなかったけれど、時間が規則的ではないから、大きな病院の看護師かお医者さんかな、と勝手に予想している。

「はぁーい、わかったー。」

お父さんは家を空けているから、私ひとりになる。
そのことを心配しているのだろう。

お父さんは、今月一度も家に帰ってきていない。
どうせまた写真でも撮りにどこか海外の観光地にでも行っているのだろう。

売れない写真家。それがお父さんの肩書き。

それでも我が家が成り立っているのは、ひとえに一家の大黒柱とも言えるお母さんのおかげだ。

そんな、家を空けることが多い両親の元に産まれた、一人娘の私。

小さな頃から、年上の幼馴染たちと仲良く過ごしていた。
そのおかげか、比較的明るい性格だったと思う。


__あの頃までは。