誕生日に会ったあと、晃哉が言っていた通り、仕事は激務になっていた。
次に会えるのは、いつになるんだろう。
そんなことを考えながらも、私たちはメールを続けていた。
すぐに返事が来るわけじゃない。
私が朝送ったメールに、晃哉から返事が届くのは夜だったり。
晃哉から届いたメールに、私が気づくのが翌朝だったり。
お互いに仕事があるから、どうしても時間は合わない。
それでも、不思議とやり取りは途切れなかった。
忙しい合間を縫うように届く、短いメール。
たった数行の言葉でも、そこにはちゃんと晃哉がいた。
そして、年末年始。
晃哉は一週間ほど、地元に帰った。
地元にいる間も、メールは続いていた。
離れているからこそ、私は携帯を何度も確認した。
次はいつ返事が来るんだろう。
今、何しているんだろう。
そんなことを考えながら、私は画面を開いては閉じていた。
そして、帰る前の日。
晃哉からメールが届いた。
『明日帰るよ。帰ったら連絡するから』
たった、それだけの文章だった。
なのに私は、携帯を胸元に抱きしめた。
「帰ったら連絡する」
その言葉が、なぜだか特別に思えた。
約束というほど大げさなものじゃない。
それでも、晃哉の「帰ったら」の中に、私との時間がちゃんと含まれている気がした。
そして翌日。
本当に、晃哉から連絡が来た。
帰ってきたその日に、私たちは会った。
地元での話。
家族の話。
友達と久しぶりに、ゆっくり飲みに行った話。
私は、楽しそうに話す晃哉の顔を見ながら、何度も笑った。
一週間、地元で過ごしてきたばかりなのに。
きっと疲れていたはずなのに。
それでも、帰ってきたその日に会いに来てくれた。
そのことが、私は嬉しかった。
ねぇ、こうちゃん。
今思えば、あの頃のこうちゃんは、私との時間をちゃんと大切にしてくれていたのかもしれないね。
すぐに会えなくても、メールをくれた。
帰る前には、「明日帰る」と伝えてくれた。
そして、帰ってきたら本当に連絡をくれた。
言葉にして「大切だ」と言ってくれたわけじゃない。
何かを約束してくれたわけでもない。
でも、振り返ってみれば――
私のことを、どうでもいいと思っていた人の行動には、どうしても思えなかった。
私たちの関係には、いつだって曖昧さがあった。
はっきりした約束があるわけでもない。
未来の話をしているわけでもない。
それでも、あの頃の私は感じていた。
私は、この人にとってちゃんと大切な存在なんだ、と。
だからこそ、私は期待してしまった。
また会える。
またメールが来る。
これからも、こうして続いていく。
そんなふうに思っていた。
次に会えたのは、バレンタインの頃だったね。
「久しぶり」
そう言って笑うこうちゃんは、いつもと変わらなかった。
一緒にいると、やっぱり楽しかった。
温かかった。
何を話していても自然で、ただ隣にいるだけで心がほどけていく。
話しているだけで、時間が過ぎていった。
私は、こういう時間がずっと続けばいいのにと思っていたんだ。
あのときは、本当にそう思っていた。
けれど――
そのあとから。
少しずつ、こうちゃんからのメールが遅くなっていった。
返事が来るまでの時間が、少しずつ長くなった。
会えない日も増えていった。
最初は、仕事が忙しいんだと思っていた。
誕生日のときにも、仕事が激務になると言っていた。
だから私は、それ以上考えないようにしていた。
私が何かをしたからじゃない。
私に飽きたからでもない。
きっと仕事が忙しいだけ。
そう思おうとしていた。
だって――
あの頃までのこうちゃんを思い返すと、私をただ遊びで見ていたようには、どうしても思えなかったから。
年末年始、地元に帰っていた一週間。
離れていてもメールをくれた。
「明日帰るよ。帰ったら連絡するから」と言ってくれた。
そして、本当に帰ってきた日に会った。
そんなことまでしてくれた人が。
身体を重ねたから。
それだけで興味を失った。
そんな簡単な話だったとは、どうしても思えなかった。
じゃあ、何だったんだろう。
あの頃のこうちゃんは、私をどう思っていたんだろう。
大切だったの?
好きだったの?
それとも――
大切だったからこそ、何かを怖がっていたの?
その答えを、私はまだ知らなかった。
ただ、確かなことが一つだけある。
あの頃の私は、こうちゃんとの時間を信じていた。
そして、こうちゃんも。
少なくともあの時間を、私との時間として選んでくれていた。
言葉よりも、行動で。
不器用なやり方で。
だから私は、あの後の沈黙を、ずっと理解できないままでいた。
今思えば。
私たちは、気づかないうちに少しずつ違う場所を見始めていたのかもしれない。
同じ時間を過ごしていたはずなのに。
同じ気持ちを抱えていたはずなのに。
ほんの少しずつ。
ほんの少しずつ。
私たちの歯車は、狂い始めていたのかもしれないね。
次に会えるのは、いつになるんだろう。
そんなことを考えながらも、私たちはメールを続けていた。
すぐに返事が来るわけじゃない。
私が朝送ったメールに、晃哉から返事が届くのは夜だったり。
晃哉から届いたメールに、私が気づくのが翌朝だったり。
お互いに仕事があるから、どうしても時間は合わない。
それでも、不思議とやり取りは途切れなかった。
忙しい合間を縫うように届く、短いメール。
たった数行の言葉でも、そこにはちゃんと晃哉がいた。
そして、年末年始。
晃哉は一週間ほど、地元に帰った。
地元にいる間も、メールは続いていた。
離れているからこそ、私は携帯を何度も確認した。
次はいつ返事が来るんだろう。
今、何しているんだろう。
そんなことを考えながら、私は画面を開いては閉じていた。
そして、帰る前の日。
晃哉からメールが届いた。
『明日帰るよ。帰ったら連絡するから』
たった、それだけの文章だった。
なのに私は、携帯を胸元に抱きしめた。
「帰ったら連絡する」
その言葉が、なぜだか特別に思えた。
約束というほど大げさなものじゃない。
それでも、晃哉の「帰ったら」の中に、私との時間がちゃんと含まれている気がした。
そして翌日。
本当に、晃哉から連絡が来た。
帰ってきたその日に、私たちは会った。
地元での話。
家族の話。
友達と久しぶりに、ゆっくり飲みに行った話。
私は、楽しそうに話す晃哉の顔を見ながら、何度も笑った。
一週間、地元で過ごしてきたばかりなのに。
きっと疲れていたはずなのに。
それでも、帰ってきたその日に会いに来てくれた。
そのことが、私は嬉しかった。
ねぇ、こうちゃん。
今思えば、あの頃のこうちゃんは、私との時間をちゃんと大切にしてくれていたのかもしれないね。
すぐに会えなくても、メールをくれた。
帰る前には、「明日帰る」と伝えてくれた。
そして、帰ってきたら本当に連絡をくれた。
言葉にして「大切だ」と言ってくれたわけじゃない。
何かを約束してくれたわけでもない。
でも、振り返ってみれば――
私のことを、どうでもいいと思っていた人の行動には、どうしても思えなかった。
私たちの関係には、いつだって曖昧さがあった。
はっきりした約束があるわけでもない。
未来の話をしているわけでもない。
それでも、あの頃の私は感じていた。
私は、この人にとってちゃんと大切な存在なんだ、と。
だからこそ、私は期待してしまった。
また会える。
またメールが来る。
これからも、こうして続いていく。
そんなふうに思っていた。
次に会えたのは、バレンタインの頃だったね。
「久しぶり」
そう言って笑うこうちゃんは、いつもと変わらなかった。
一緒にいると、やっぱり楽しかった。
温かかった。
何を話していても自然で、ただ隣にいるだけで心がほどけていく。
話しているだけで、時間が過ぎていった。
私は、こういう時間がずっと続けばいいのにと思っていたんだ。
あのときは、本当にそう思っていた。
けれど――
そのあとから。
少しずつ、こうちゃんからのメールが遅くなっていった。
返事が来るまでの時間が、少しずつ長くなった。
会えない日も増えていった。
最初は、仕事が忙しいんだと思っていた。
誕生日のときにも、仕事が激務になると言っていた。
だから私は、それ以上考えないようにしていた。
私が何かをしたからじゃない。
私に飽きたからでもない。
きっと仕事が忙しいだけ。
そう思おうとしていた。
だって――
あの頃までのこうちゃんを思い返すと、私をただ遊びで見ていたようには、どうしても思えなかったから。
年末年始、地元に帰っていた一週間。
離れていてもメールをくれた。
「明日帰るよ。帰ったら連絡するから」と言ってくれた。
そして、本当に帰ってきた日に会った。
そんなことまでしてくれた人が。
身体を重ねたから。
それだけで興味を失った。
そんな簡単な話だったとは、どうしても思えなかった。
じゃあ、何だったんだろう。
あの頃のこうちゃんは、私をどう思っていたんだろう。
大切だったの?
好きだったの?
それとも――
大切だったからこそ、何かを怖がっていたの?
その答えを、私はまだ知らなかった。
ただ、確かなことが一つだけある。
あの頃の私は、こうちゃんとの時間を信じていた。
そして、こうちゃんも。
少なくともあの時間を、私との時間として選んでくれていた。
言葉よりも、行動で。
不器用なやり方で。
だから私は、あの後の沈黙を、ずっと理解できないままでいた。
今思えば。
私たちは、気づかないうちに少しずつ違う場所を見始めていたのかもしれない。
同じ時間を過ごしていたはずなのに。
同じ気持ちを抱えていたはずなのに。
ほんの少しずつ。
ほんの少しずつ。
私たちの歯車は、狂い始めていたのかもしれないね。
